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2006年8月 2日 (水)

*Other Side Of The FEEL*

は知っている

俺だけが知っている。何故彼女がいなくなったのか、、、。

今は夏の終わる頃、たまに涼しい風が吹く。

俺が彼女を気になりだしたのは半年前、二月。皆が高校受験の勉強に追われ始めた頃。彼女が推薦を受けることは何故だかほとんどの人が知っていて、俺もその一人だった。

そして俺が初めて話をしたのも気になりだしてすぐのこの頃だった。

「先生、お腹が痛いんですけど。」
少し震えた弱々しい声がして、先に保健室で寝ていた俺はふと目が覚めた。その生徒は先生とひとしきり話をすると隣のベッドへゆっくりと入った。
その後聞えたのは先生の長い溜め息。
「ちょっと職員室行くから。」
そして保健室を足早に出た。俺はまた静かになった部屋で天井を見つめた。
ガタン
隣のベッドが揺れ、俺はその声の持ち主にひかれた。静かに体を起こすと、気付かれないようにそっとカーテンに手を掛けた。
「高橋。・・・あっ。」
思わず出た声に俺は慌てて口を押さえた。が、すでに遅いのは当たり前だった。しかしこちらを振り向いた彼女に、俺は更に慌てさせられたのだった。

頬を伝う涙。
そうか、彼女には泣く場所がないんだ。・・・でもそれは俺が聞くべきことなのか?
俺は考えたくせに、それでも声をかけた。
「どうしたんだ?」
彼女には幼なじみの親友と彼、たくさんの友達がいる。それなのに時折見せる淋しそうな表情は一度見たら忘れられない程の衝激を与えられる。その表情を見てから俺は彼女を目で追うようになったのだ。
「えっ、あのっ・・・  何だよ。うるせぇっ!」
彼女は今まで涙を流していたとは思えない程のキツイ目をして言い放った。いつも見ている彼女からはまるで考えられない言葉使い。

彼女は普段明るくて優しい。
「何聞いてんだよ。誰だよ。人が泣く理由を興味本意でどうしてだの聞くような奴、話す価値もねぇ。 最悪、、、死ねば?」
彼女はニヤリと唇の端を吊り上げた。目は相変わらず鋭くキツくて俺は言葉を無くした。

それでも俺は彼女を嫌いにはならなかった。
俺だけが見たその時の彼女の涙。

本当に知りたかったんだ。

二月の五日。彼女は推薦受験に落ちた。それを担任から聞かされ、彼女は親友が期待して待っている昇降口へと急いで降りていった。
表情を少しも変えずに担任の話を聞いて、最後に「一般でがんばります。」と丁寧に頭を下げていたところまで俺は見ていた。そして学校の4階で昇降口から出て行く彼女ととの親友を見た。笑い合いながら話している。

しかしやはり・・・
「高橋。」
悲しい目。
俺だけなのか?彼女がこんな風に見えるのは。

それから俺はわざと彼女と同じ時間に登校して話し掛けるようになった。遅刻決定だと言うのにいつもマイペースで歩いている彼女は「どうせ遅刻なんだから走るのもったいないんだもんっ。」と言う。そうすると俺もなんだか早歩きしているのがもったいなく感じてきて、彼女と共に登校する。

「ねーね、結構前保健室にいたよね。ねぇ、泣いてたのは秘密ね。特にアイツには。」

アイツというのは彼女の幼馴染のコトである。

「言わねぇよ。そのかわり、訳、、話したくなったら俺に一番に言って欲しい。」

「ふっ、構わねぇよ。」

その返事で俺はなんだか嬉しくなった。

「オスっ!はよー。」
「おはよう。」
今日も2人で遅刻組みになる。
「あのさぁ、夏になったら海連れてってよ。バイクでぶーんって!」
「はっ、俺等まだ15だよ?バイクもってないし。」
「そうなの? 私の友達は乗ってたけど。」
「ええっ?」
彼女と話すのは楽しい。こんな風にたまに冗談を言ったりして。
彼女には彼氏が存在するというのに俺はいつのまにか・・・いや、、わからない。

三月九日。公立入試を控え、俺達は卒業式を迎えた。卒業式に彼女は泣くことをしなかった。
「高橋!、、、俺は、」
「好きだよ。あんた。最後だから言っとく。」
俺の言葉を遮るようにして言った彼女の言葉を聞いて俺は自分の言いたかった言葉を忘れた。それでも何か伝えたくて彼女を呼び止めた。
「高橋。えっと、最後じゃないし、、、」
「あっごめん。彼が待ってるから。」
彼女はまるで二重人格みたいだ。言ってることがよく矛盾しているし、そうでなければ、今の言葉だって矛盾している。そういえば彼は高橋があんな言葉を使うことを知っているのだろうか。
「待って。俺、ちょっとそいつと話あんだけど。」
「?うん。」
彼女は彼を呼び寄せて一人どこかへ行ってしまった。
「何ですか?」
彼と話すのは初めてだった。向こうも俺が何故話をしたいのかわからないだろう。
「あのさ、高橋ってお前と付き合ってんだよな?」
彼はコクリとうなずき、照れたように下を向いた。
「・・・あのさ、なんつーのかな。えっと、お前って高橋が泣いてるとことか見たことある?」
「はぁ?何に泣くんだよ。あいつは、お前が想ってるような大人しいやつじゃないって。
彼女の冗談だと思っていた話が急に本当になった気がした。

俺に本当のことを伝えてくれてたんだ。
「高橋は、優しい。」
「僕、もう帰るで。」
彼は半ば呆れたような声で言ってクルリと向きを変えて離れて言った。
彼は本当に彼女のことが好きなのだろうか。彼女が色々な人を助けたこと、俺は見ていた。優しくて頼もしくて、でも一部からは何故か嫌われていた彼女。遅刻、早退が目立っていて推薦も危うかったと聞くが、俺には特に問題児というところは伺えなかった。

その日の夜、俺は迷ったあげく彼女の携帯へ電話をかけた。メールは何度か交わしたことがあったがこうして話すのは初めてだった。
「何だ?」
彼女の声は眠たそうな雰囲気を帯びていた。
「何で泣かないんだ?」
「泣いた。今日も。、、、受験に落ちた日もな。」
「何だよそれ。」
このあたりでは、彼女はブラックだった。
「うるさい。話してやるから。私の親友さぁ、何か今日すごく勇気を振り絞ったんだよね。私はいつもあの子に助けてもらってばっかりで、それなのに私は何もできなかったから悔しくてさ。でも彼女はこう言ったの。嬉しい。って。何でだと思う?卒業式にも泣かなかったのに、私の為に泣いてくれたことが嬉しいって。彼女引っ越すんだよ。最後の思い出がこれだよ。本っト、何もできなかった。」
「・・・。」

何があったのかははっきりと把握できない。言葉が出てこなくて、俺は黙ったままだった。
「私は離れるのがすごく恐いの。彼女は私のことイチバンだって言ってくれたけど、時間が経てば絶対変わっちゃうでしょ?・・・怖い、、、とか思っちゃって。」
彼女は泣いているようだったのに、俺は何も言ってやることができなかった。彼女が電話を切るのを待つしかなかった。

彼女は高校に合格した。俺も同じ学校に合格していた。クラスは違ったが、たまに窓から見える彼女はいつも一人だった。それでも何とか日々は過ぎて、俺の不安は増すばかりだった。
そして俺はまた彼女の携帯に電話をかける。
「何だよ。」
いつの間にか定番になった第一声を聞いて俺はホッとした。
「高橋、お前大人しくないんだろ?ダチくらい・・・」
「余計なお世話。私は確かに大人しくない。暗いだけなんだ。いいだろ別に、、、。何かさぁ、生きてても、しょうがないって思うようになってさ。意味ってあるのかなって。何もないし、何も望めない。実際幸せって”なんじゃないかって。
「・・・ペシミスト、、、って言うんだぜそういうの。高橋にはあの子がいるだろ?」
俺はもう黙ったりはしなかった。しかし、、、
「私、いらなくなっちゃった。アイツに会ったわ。もうダメかも。一応この世にいらない人間なんていないと思ってたのに。」
「・・・。」
「これ以上何もいらなかったのに。私にはそれだけだったのに!」
ホワイトな彼女はいつも本音を話してくれる。今回もそれは同じ。俺はまた黙ろうとして、卑怯だった。こんなんじゃ、あの時と何も変わってない。
・・・そうだ
「歌おうよ。歌って。歌、好きだろ。♪~♪♪さぁ、歌って。」
俺は歌った。何でそうしようとしたのかはわからない。ただ、何かで彼女を癒そうとした。

結局彼女は歌ってはくれなかった。でも俺の気持ちは十分と伝わったようだ。

「大丈夫だよ。」
俺はそう告げた。
「大丈夫だよ。」
彼女もそう言った。

それから俺は彼女に会うことなく夏休みへ入った。彼女は夏休み中に16歳になり、俺も22日遅れで16歳になった。海へ行くことはなかった。
あの日、本当にもう大丈夫。そう思った。
ああ。それなのに、彼女は俺の前から姿を消した。
「どうして。」
俺はひざまずいた。そして身体を小刻みに震わせた。

――夏休みの終わりに彼女のメモを見つけた。
  淋しくなったら歌うよ。 心配すんな。
  大丈夫、本当に。 お前も大丈夫だよって言えよ。

                 by高橋――

俺は知っている。俺だけが知っている。彼女が何故いなくなったのか。

「大丈夫だよ。高橋。」

でも、俺は知らない。何故彼女が死んだのか。わからない。
どうしてこんな悲しい日に、空は青く澄みきっているんだろう。俺は結局何もできなかったんだ。悔しい。俺は目が熱くなってきたのも気付かずに彼女の姿を頭の中に浮かべた。そして、その熱が頬を伝っても拭わず彼女のメモの言葉を胸の中に浮かべた。
「高橋―――!!」
空に向かって叫んでも返事はない。何でこんなに悲しい結末がやってきたんだろう。一体誰が望むんだ?一体誰が喜ぶというのだ?

高橋 瞳

俺は自分の名前さえ忘れて、彼女の名前とその出来事しかわからなくなり、、、。

「高橋。」

その言葉だけしか口に出せなくなっていた。

あなたが「大丈夫だよ。」って言ってくれたから、私は大丈夫だったの。 ありがとう 榎本君。
俺は本当の高橋はわからないはずなのに、本当の高橋のことが好きだった。
最後、彼女の俺を呼ぶ声で俺は再び声を取り戻した。

二月。榎本敦16歳。俺は春を待たず、高校を中退した。俺にはやることがあった。
「高橋。大丈夫だよ。俺が絶対見つけに行くから。」

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コメント

ayaさま、
はじめまして。甲斐ミサキと申します。
自サイト《ミナソコノ住人》にて、『ココログで読める小説群』と題し、ココログ内で発表されている小説の蒐集と紹介を行っております。このたび貴サイトへのサイト、小説へのリンクをお願いしたいと思うのですが、掲載許可願えると幸いに存じます。

それでは失礼しました。

投稿: 甲斐ミサキ | 2006年8月 6日 (日) 11時40分

はい。是非お願いします。
ブログのことがまだあまりよくわかっていないので、どうすればよいでしょうか?

投稿: aya | 2006年8月 8日 (火) 13時43分

ayaさま、
ミナソコノ住人管理人の甲斐ミサキです。
わざわざメールでのご連絡お世話をおかけしました<(_ _)>
リンクの許可ありがとうございます。

特にこれといったことをしていただく必要はありません。
こちら側が小説の紹介記事にayaさまの小説サイト及び小説へのリンクを張らせてもらうだけですから。
もしよろしければ、ココログの編集機能にある「マイリスト」に「ミナソコノ住人」への相互リンクを追加してくださると嬉しく思います。
それでは、長々と書いてしまいましたが、今後とも宜しくお願いいたします。

投稿: 甲斐ミサキ | 2006年8月 8日 (火) 16時47分

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