2007年7月 9日 (月)

*Other Side Of The TRAP*

“夢見るだけなら寝ててもできます。”

そう言った彼女の目に僕は恐くて『最低評価』にマークした。

でも僕がそうしたせいではない。

彼女が落ちたのは。

僕は一昨年この高校へ来た、まだまだ新米教師だ。

今年は推薦受験の見学を申し出たところ審査の真似事までさせてもらえた。

面接のベテラン先生6人+1人で若い僕だけが妙に浮いていた。

―失礼します。―

一度に10人ずつ長いスカートと不自然なくらい黒い髪の子供達がほとんど同じポーズでやってきて似たようなことを話して出て行く。それが何組も続いて僕は、まぁこんなもんだよな。と疲れていた。

しかし、最後に差し掛かったときぼくだけじゃなく皆が目を見開く。

その少女は何とどうどうとした態度であろうか。

何と綺麗なのであろうか。

くぎ付けにされた。

全員が話をする間も彼女から目がはなせない。

子ど達は自分の夢を語り、慣れない敬語が溜息を近づかせる。

「―――――、、。―――。 私は―――。夢見るだけなら寝ててもできます。」

その部分だけが記憶になる。

彼女の夢が何か、、彼女が叶えたい理由、何一つわからない。

ただその目が僕の目に穴を空けたようだった。

合格者名簿に彼女の名はなかった。興味本位を装って他の先生に聞いてみると、部活が帰宅部なのと、欠席の多さだった。募集要項のぎりぎりの欠席、いやぎりぎりというかももう学校の校長がよく通したものだと思わんばかりな感じであった。

そして入学式。

やっぱり未だに雑用をさせられる僕は少し曇り空の下、生徒の確認をしていた。新品の制服に身を包んだ子供達が体育館へ次々と入っていく。

式が始まって一息ついたところで僕はやっと冷めかけたコーヒーに口を付けた。

バタバタバタ!

そう、必ずいるんだ。最初って時に遅刻する冴えない男が。

「遅くなりました。」

それは俺の予想を少し反した女の子だった。

それは声だけで確認したことで実際に目を向けたりはしなかった。

「クラスは?」

「11組です。」

「はい、体育館の一番奥ね。」

「ありがとうございました。」

書類にだけ目を通し紙を渡した。

ただ少し気になったのは彼女が走り去るときにしたタバコのような匂いだった。

僕は体育教師で常に体育準備室の机にいる。

この学校の体育会系教師はその迫力も会ってあまり慕われてはいない。しかし嫌われているわけではないということが生徒との調度いい距離らしく授業は充実したものである。

その先生方はいつも僕の指導をしてくれてまるで僕まで生徒のようだ。

そんな僕でも教員であることには変わりなく今年は3年目ということもあって新一年生半分の女子を受け持つことになった。

“一、二、三、四、五、六、七、八…”

この学校には特別な体操がある。4月の体育はほとんどがその体操の授業。そして今、5月の中旬に入ってくると、チャイムが鳴る前から集まって先生が出てくる前に体操を始めるようになる。

「はい、今日はソフトバレーです。」

この頃になると初めは普通の靴下だった子が何メートルもあろうかというルーズソックスになっていたり、人形のようだった黒髪がオレンジに輝いていたりと生徒の種類も微妙に分かれてくる。僕は一応注意をするが聞く様子もないのでそこまで真剣にはならない。

バタ―――ン

「先生!!

僕がバレーの様子を見回っていると一番端のコートでひやっとさせられる大きなくて鈍い音が響き、呼ばれて振り向いたときにはもうそこに皆が集まっている状態だった。

「どうしたっ?!

慌てて掛けていくと一人の子が倒れていた。あのものすごい音は彼女が倒れた音だった。見ていた生徒が言うにはフラっとしたと思ったら、ポールに倒れかかってそのまま一緒に倒れたという。

僕は頭が真っ白になって考えが浮かばなくなった。しかしぼーっとしている場合でもなく、生徒達に体育を続けるように指示だけだすと、彼女を担いで保健室へ走った。

彼女は特に病気というわけではなく、次の時間から通常の授業を受けたという。

そして僕はというと保健の先生に叱られたのだった。彼女の身に何か起こっていたのだとしたら、体を動かさないように担架で運ばなければならなかったらしい。

コンコン

「失礼します。先生コレ作ってきたんですけど、良かったら食べてください。」

「君は。」

僕はその倒れた彼女の顔をナゼ今まで見たことがなかったのだろうか。

彼女はあのときに僕の胸に穴を空けた、、、目で。

僕にありがとうございました。と言った声。

今まで気がつかなかったのは彼女に存在感がまるでなかったからなのだろうか。

彼女はそうやって困惑する僕の心を知るはずでもなく、にっこりとして小さい包みを渡してきた。中身はクッキーで、ぼくが一つ口に運び美味しいと言うと満足気な表情で帰っていった。

ハァ

そうか、彼女は一般入試で…。

気づいてからの授業は彼女から目が離せない。

ナゼだろう?

そんなに恐い存在なのか。でも解らない。

いつもどれだけ見ても何も変わった様子がない。

「先生!また瞳ばっかみてる。」

「へっ?」

「さっきから呼んでるのに~先生瞳にゾッコンって感じ。」

今時の高校生はとんでもないことを言う。先生と生徒の恋愛を想像しているようだ。

「ふざけてないでさっさと初めてください!」

僕がこうムキになってしまうから更にあおられるわけなのだが、どうも言われると焦ってしまう。

最近になって言われる回数も増えて、、、僕の目はそこまであからさまに彼女を追っているのか?本人に気づかれているかもしれないことを考えて見ると少し恥ずかしくなった。

「先生。あげるっ☆」

また彼女であった。忘れようとしても忘れられない。

「高橋、君って推薦のときにいた子だよね。良かったな入れて。最近気づいたんだ。僕のことわかる?」

「えっ?試験官してたんですか?そういえば浮いてるくらい若い先生いましたっ!あの推薦では落ちちゃって、一般でがんばりました。」

「そうだな、あきらめちゃあ入れなかったもんな!高橋。」

クスッ

「どーした?俺変なこと言ったか?」

「えっと、私のこと“高橋”って呼ぶ人先生合わせて二人しかいないんだよ。変な感じ。それにアンタのしゃべりかた熱血先生ぽくて不自然…作ってるワケ?その性格。」

「ん?」

「先生はクラスで結構人気ですよ。かわいーとか言って。」

クスクスと笑いながら言う彼女。でも僕は今何か引っかかることがあって、、、。

これではまた気になってきてしまう。彼女から逃れられない。

「、、、。かわいーって、、、僕そんなに頼りないかなぁ。ハハハ」

「いえ、、そういう意味じゃっ!ごめんなさい。」

彼女は困ったような顔をしていたがチャイムの音が鳴って、そのまま戻っていった。

彼女と僕の年の差は9歳。

そして関係は教師と生徒。

彼女は僕の教官室によく来るし、僕が彼女を目で追ってしまうし、、、。

高校生の妄想と推測、偽証で僕達は人目からとんでもない関係とされてしまっていた。でも僕も高橋もこの時点で、そのことには気がついていない。気が付いていたら少しは意識したり気をつけていただろうに。

どうしても自分のことがうわさの中心になるという経験がない二人は皆と知らない時を過ごしていた。

ガシャン

「きゃっ――」

ある朝早くに体育倉庫から物の落ちる音がして、僕は走って向かった。早い時間過ぎてほとんど誰もいないはずの場所からの悲鳴に僕は心臓がドクドクいうのがわかった。

「だっ、、誰かいるのか?」

数秒走っただけなのに息切れした僕は想像していたモノとはかけ離れた光景に呼吸困難になりそうになった。

実を言うとオバケや幽霊といった類には弱い。

人の気配のない体育倉庫にボールが散らばっているのを見て足がすくんだ。

しかし、

「高橋っ?!何やってんだ、、、。」

「見つかっちゃった!あの、スポーツ大会の朝練しようってことになって。」

音は彼女がバスケットボールのかごを勢いよくぶちまけたものだったのだ。ボールにまみれて彼女は泳ぐようにもがいていた。

一応逃げようとしているらしい。スポーツ大会練習のボール貸し出しは禁止だからである。

「ほら、手ぇかして。」

「ごめんなさい~」

ぐいっ

「だはっ!」

彼女にひっぱられて僕もボールの中へ落ちた。

「“だはっ”だって。クスクス。」

彼女はお腹をおさえてわらった。

「…。」

「どうした?」

「あっ、いえ。」

彼女は笑って細くなっていた目を急に見開いたような目つきでどこかを睨んだようだった。

またナニかに穴を空けようとでもしたのだろうか。

そう思わせるような瞳だった。

「先生も共犯だよ。一緒に片付けましょっ。」

彼女のあの視線の意味はいつしかわかることになる。

それは遠いことではないが、遅かったことである。

あえていうなら2学期から他の学校へ移されることを命じられる夏休みの中頃だろう。

2年と半年ほどがすぎて彼女の卒業式がやってきた。僕は久々にこの学校の校門へ立った。

彼女が僕をハメたのなら、僕は彼女を忘れよう。

彼女が共にハメられたなら、僕はこの気持ちを伝えよう。

すべては、、、今体育館へ行けばわかる。

卒業を迎えて少し大人になった彼女に僕は逃げることはない。

これまでにも何度彼女に会いにこようと思ったことか…でも、待っていた。

それが間違っていなかったのかどうかということはこれからわかることである。

これからわかるはずなのだ。

そこに彼女が存在していれば。

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2007年6月 4日 (月)

*Other Side Of The LOVE*

俺は付き合って1年になる希美に友人を紹介されて正直慌てた。

彼女は希美とタメの高校1年生で、つまり俺より4つ下。

俺は6年前からチームに属している。

県内にはそれなりに名の通っている“TEAR”。高校のときから6年で、抗争には至って重要なポストだ。いや、そんなことは今どうでもよかった。

彼女を見て慌てたのは俺がもうすでに知っていたからである。

忘れもしない、あの6月の出来事に俺はまだ恐怖を感じずにはいられなかった。

「最近俺らの縄張りでたむろってる弱小チームがいる。弱小だけど人数は確実にふえている。ここで無名のまま潰すってのはどうだ。」

リーダーは手が早く、頭を少しでも出してきたチームはとことん潰すという傾向がある。

弱いうちに叩くせいで俺たちは結局のところ本当に強いのかと考えさせられるくらいだった。

他のチームとも今は争いが落ち着いているせいもある。

「竜鷹さん、この弱小チーム。えっとなんだっけ?コイツ等暴れたり目的とかじゃないみたいでただ遊んでるグループに名前付けただけみたいな。相手にする必要ないんじゃないっすか?」

俺は実際どうだかわからないがそんなことを言って標的を育てようとしていた。

「名前名乗るってことがどういうことかわからせてやるんだよ!」

リーダーが人の言うことを聞くような人ではなかったのだと、俺は何度も思い出すが何度も忘れてしまうのだ。

そして俺等は奴らの溜まる公園へと行ったのだった。

しかし、あきれたことにそいつらは女子小学生を、それも一人を全員で囲んでいた。

さすがのリーダーも呆れた様子で“馬鹿らしい”と言い捨てて引き上げることになった。

そんなことがあったなんて忘れた、、、頃、そのグループがこの圏を統一すると言い張ったという噂が流れ出した。

この辺のチームは、決まってある場所に落書きを残す。

そこにそのチームの名前が刻まれたと同時に回りの落書きにバツが付けられたのだった。

その場所は廃ビルという不良物件の4階壁だ。非常階段から上れるようになっていてそこからは駅をはじめとするこの町が一望できる。

俺は早速そのチーム呼び出した。

戦いは早い者勝ちで、俺等が手を出している間他のチームは動けない。

TEARではそういうチームをギャラリーとして集めアピールするのだ。もうそんなことをしなくてもこの辺のナンバーワンは俺たちで決まりなのだが。

俺は戦いを明日に控え、バス停のベンチで座っていた。天気が良くて少しうとうとしたが眠りにはつかずにボーっとしていた。

「やっぱりトシに言った方がいいんじゃねぇか?呼び出されてること。」

「マズイって、俺等が調子にのって勝手にしちまったんだから。」

「まさかこんなことになるなんて。なんでトシがしなかったか初めてわかったよ。俺等別にケンカしたいわけじゃないんだよなぁ。」

俺はその会話に反応を示した。どうやらメンバーらしい。目をつぶったまま俺はその話に耳を傾けていた。

「大丈夫だって、ケンカしたいわけじゃねぇけど普段からよくやるじゃねーか。いけるって。武器もあんだろ?」

一人が自信気に言う。

「そうだな。」

「俺等だって無名の弱小チーム呼ばわりはもーうんざりだぜ!」

「絶対勝つんだ。その後でトシには誤ろう。」

それに当てられて他のメンバーたちも次々とやる気に満ちていった。

「仲間を集められるだけ集めろ。トシには絶対に言うな!!

オ――――!!!!!

俺はニヤリと口の端を吊った。“トシ”、それがリーダーの名だとそいつがいつか見たとき中心にいた人物だとわかった。

後でやればいい。

翌日、呼び出した場所の近くでは祭りがやっているらしく、人がいっぱいだった。しかし、この場所に入ってくる人はなく、こっちの声や音も届かないようだ。

そいつらは時間通り、バイクにまたがってやってきた。

大きな旗をヒラつかせて止まるとそれを地面に勢いよく突き立てた。

「俺等が負けたらこれを燃やしても構わねぇ!」

一人が叫んだ。その声は昨日の自信に満ちた奴のそれに同じだった。

きっと副リーダーなのだろう。

わああああああああああああ――――――――

一戦交えだすと本人たち以外はもうどっちがどっちかわからなくなる。

しかし、人数的にも実力的にも俺等のほうが上回っていて、そこで何とか見分けられる。

半時間もしないうちに俺等は圧勝した。そして大きな旗を取った。

その時地を張った一人が旗をまだ握り締めていた。

「くっそぉー!!!!

そいつはその握った旗を杖にして立とうとするがそうもいかない。俺は頭をあごから蹴り飛ばして手を離させた。

「うわっ・・・」

「お前は、、、。」

「友達の瞳ちゃん、可愛いでしょう!ごめんね瞳ちゃん“お前”とか言われちゃって。チーマーだから素行も口も悪いの。」

希美は噴出すように笑って言った。

「瞳?」

俺はつい聞き返した。顔は似ているようだが俺が知っていると思った人物はそんな名前ではなかった。

「どうも。」

彼女はペコリとおじぎをした。よく見てみれば大人しそうな子で、俺と一度でも関わるような感じではない。

俺の思い違いだったのだ。

俺は安心して心の中で溜息をついた。

「悪ぃな、似た奴知ってるような気がして。瞳ちゃんだよね、よろしく。」

「似てる子って?浮気とかしてないでしょうね!」

「違うって!」

いたずらっぽく俺を攻め立てる希美は、俺は真剣に言うとわかってくれたようだ。

今日は祭りがあるっていうことで俺は希美に着いてきていた。

夕方は写生とかしている地味な祭りらしいが、夜は出店が栄えてそれなりに楽しいらしい。

3人で歩いているとゲームコーナーのような一角を発見した。

やはり一番人気は射的だ。

「へぇ~。おもしろそう。」

「・・・。」

俺は一瞬耳を疑った。それはいつかどこかで―――

「へぇ~。おもしろそう。、、、ってかせっかく楽しんでたのにな。」

一人のガキが俺等の前に現れた。いつしか囲まれていた小学生だとはその格好からわかることはできなかった。

「アイ、バカやろ。くんじゃねー!!

メンバーの一人が叫ぶ。

しかしそのアイはまるで聞こえていないかのように前へ進んできて俺から旗をとって自分の後方へ再び突き立てた。

油断していたせいで奪われたと思っていた俺はすっかりなめたままでいた。

「第二ラウンド・・・。どう?」

「ガキが!おもしれぇ!!

「第二ラウンドどう?」

「!」

俺はまた唾を飲んだ。

彼女は1回を失敗に終わらすと再び希美も誘って二回目の挑戦にでた。

パン

「楽勝!」

ドスッ!

「楽勝!!

俺は彼女の見えぬ蹴りを左頭部にくらって平衡感覚を失い、地面に倒れた。

それから彼女へ向かっていく者の足音が永遠と続くのがわかった。

俺は耳を地にあてたまま目が閉ざされていったのだった。

目を覚ました時はなにもかもが終わった後だった。

夜の寒い中、俺等とギャラリーまでもが倒れていた。

ただ、俺等の誰のものでもない血がべったりと血溜まりを作っていてナイフが落ちていた。

そして仲間が一人消えていた。

俺等は少女一人に全滅だった。

しかし、それを見ていた者誰もが言葉にすることはなかった。

ギャラリーも倒れていたせいでこの血が誰の者なのかもよくわからないし、警察沙汰にもならなかった。

「私ちょっと手洗ってくる。」

希美は水あめで粘った手を見せるとトイレへと走っていった。

ベンチに残された俺は無言を保とうとした。

「アンタさぁ、、、」

俺は急に印象と違う口調で話し掛けてきた彼女に背筋がゾクッとした。

だが同時に別人別人!と何度も心の中で言い聞かせていた。

「何?」

「私のこと誰かに似てるって?」

「ああ、気のせいなんだろうけど。」

「瞳って名前、英国語で何て言うか知ってる?」

「?えっと、eye、、、アイ?!

「ご名答!昔お前等のチームを皆殺しにした敵ってわけだ。」

彼女は笑いながら言った。俺は何と返事していいかわからなかった。

確かに憎い。

しかし戦う気にもなれない。

そもそももう存在しないチームの者と戦う理由なんか・・・

「ごめーん、私遅かった?場所わかんなくなっちゃって。」

「ううん。いいよ、私そろそろ帰るね。じゃあ2人で仲良く!」

希美が戻ってきて座ったのと同時に、彼女は立ち上がった。

そしてウィンクするとタ――っと走っていった。

それはさっきまで俺と会話していた人間には見えず、ただの無邪気な高校生だ。

「ねぇ、瞳の顔覚えた。?」

希美は内緒話にも似た声で呟いた。

「まぁ、そりゃ。」

何年も前から忘れもしない。とはさすがに言えはしない。

「あの子なの。私が前にムカツクって言った子。」

「えっ?」

「あの子リンチしちゃってくれない?ねぇ。」

希美は甘えるように俺の腕に絡み付いて、顔を近づけてきた。

ここで俺がOKを出していればその唇は俺のそれに重ねられていただろうか・・・。

「、、、。できるか!んなコト!!

確かに憎い。

しかし戦う気にもなれない。

そもそももう存在しないチームの者と戦う理由なんか。

そうじゃない、俺は恐い。

ただそれだけだ。

何年経ってもあの恐怖が忘れられない。

あの血の海の謎は謎のままだが俺には知る勇気もない。

そう、俺は死ぬまで謎を背負ったままになるのだ。

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2007年5月 2日 (水)

*Other Side Of The SHADOW*

窓際の日向の君へ

あなたはいつも何を見ているのでしょう。

あなたはナゼ雨に対してそんな怪訝な目を突き刺すのでしょう。

私は彼女と同じ高校に通っている一つ先輩。

彼女は私のことを知らない。

ただ、彼女が入学してきてから1ヶ月、私はこの窓から彼女を見ている。

小顔で目が大きくて、白い肌にピンクの唇、真っ黒い長い髪。

彼女は私が今まで知っている中で一番美しい。女の私でも見ていてドキドキさせられる。

路地裏の日陰の君へ

あなたはいつも何を思っているのでしょう。

あなたはナゼ雨の日でも瞳を閉じて座っているのでしょう。

私は彼女を学校帰りにほとんど毎日みる。

彼女は私のことを知らない。

ただ私が3年生になってから1ヶ月、この道で彼女をみている。

ビルとビルとの間、人一人通れるくらいの路地にいつも片足を抱えて座っている。雨が降ってもあたらないが、陽もあたらない。

帽子を深くかぶった彼女の表情は未だ明らかではない。

その見ているだけの私が終わり、驚くべき事実が発覚するのは6月になったある日をきっかけにしたときのことだった。

雨が多い梅雨に入ったこのごろ。

周りのみんなは嫌がっているけど、私は結構気に入っている。雨音は毎回違うし、何より傘が昔から好きなのだ。今日も私は傘をさして家へと歩いている。今日は特に激しい雨のせいか靴下からスカートの裾まですでにびっしょりだった。そんな理由で多少早足だった私は前もあまり見えていない。

その時、

ドン

「ってーな、このやろう!!

よりにもよって怖そうな2人組みにぶつかってしまった。腕を強く掴まれた私は思わず傘を落とした。

「ごめんなさい。」

「何だって?聞こえねーよ。でかい声で、土下座して誤まれ!!

そうして私は道路に叩きつけられた。

私は震えながらもそこに正座して手をついた。

目からは大粒の涙が流れて止まらない。

私は意を決して頭をゆっくりと下げ始めた。

「何だ?お前。」

男が急に呟いた。私は顔を上げられずに全員の動きを止めた黒い影の足を見た。

その影の主は私の両肩をそっと持って立ち上がらせたのだった。

「そんなことしなくていいよ。」

その言葉を聞いて私はやっと震えが止まった。

安心できる何かが心の中に芽生えた。

「財布返せよ。」

影はボソリと何かを呟いたようだった。

聞こえずに耳を傾けた私が次に男たちを見たときは数秒前と違う位置にいた。

まったく状況がつかめない。この恐くてごつい男たちが地面に転がっている。

しかも私が驚く声を上げる前に影が叫んだ。

「スリです!捕まえてください!!

警官が走ってくると同時に影は別の方向へ逃げるように走り出した。

“待って”とそう声をかけるにはあまりにも状況がややこしくなりそうだったので私は後ろ姿を見送るだけにとどまった。

今呼び止めなくても次に会うときお礼を言えばいいのだ。

日陰の君へ。

警官との話で、あの男たちが本当にスリだということがわかった。

影がその場しのぎに言ったのだとばかり思っていたのだが、真相はあの男たちが私の財布をスリにぶつかってきたというものだった。

もう少しで財布を盗まれた上に土下座までしそうになっていた私は自分に腹が立った。

もう一つわかったことは影は怪我を負ってしまったかもしれないということ。私のカバンに覚えのない血がついていた。

日向の君へ

今日は日陰の君と言葉をかわします。

きっと、あなたとは全く反対の人なのでしょう。日向と日陰、あなたたちもいつか話せたらきっと面白いと思います。

昨日雨が降り切ってしまったせいか、今日は朝からずっと曇りとなっている。

用意していた傘の出番がないまま私は道を歩いていた。

何だかとてもいい日だったように思えていた。ただ一つ残念だったのは日向の君の白い肌にあざが目立っていたこと。傷が残ってはとんでもない!私は勝手に怒っていた。それでも足が軽快に滑るのはもうすぐ例のビルに着くから。

少し緊張していたけど思い切って間を覗き込んだ。

そこにはやっぱり彼女が座っていた。しかしそこで一つ気が付いたのは、呼びかけ方を考えてなかったこと・・・もちろん“日陰の君”と呼ぶわけにもいかず、立ち尽くしていた。

「何?」

そうしていた私に気が付いた日陰の君はゆっくりと振り向いた。

ビルの陰と帽子の影とで顔はわからない。

「あのっ、昨日はありがとう。助けてくれて。」

「別に、あんたのためじゃねぇ。あいつらがムカついてただけだ。」

彼女は静かに言っただけで私のほうから目をそらした。

「私は、、、。」

「知ってる。いつもここ通るだろ?雨の中でも楽しそうに、、、気がしれないな。」

「・・・。」

「つまんない奴って、俺のこと思った?そうだよな。あんた俺のことずっと見てたろ?どんな奴かって想像して期待してただろう。まぁ、どうだかわかんないけど本当なんてこんなもんだろ。」

彼女は小さな溜息混じりに言って、上を向き目を閉じた。その瞬間、それを見計らっていたかのように細かい雨が落ちてきた。

「あ、、、あなた、怪我したんじゃない?あの時。」

「これのことか?」

彼女は自分の帽子をそっと脱ぎ払って頬をこちらへむけた。今まで気が付かなかったが彼女の肌は真っ白な雪のようだった。そして真っ黒い長い髪、目が大きくって。まるで、、、いや、それは

“日向の君”

私のカバンの血は彼女が殴り返されて口の中を切た血だったのだ。

「怪我したって。それ知って、治せやしないくせに。どうしようってんですか?千鳥先輩。」

そしてまた、私の名前を知っているということにも驚かされた。

彼女は帽子をかぶり直すと再び座った。

「先輩、雨は俺にとって最悪。私の涙を伝えてくれなくなるから。」

私は黙って上を見上げていた。彼女の口調が変化したことに気付かず、ただ今日だけは早く止んでほしいと願っていた。

「雨はうんざりだ。そうだな、あんたにその気があればだけど、、、雨が止む夏の終わりにだったら話したいかもな。」

私が願っても雨は止むはずがなかった。彼女の言った言葉に私は目を丸くして“うん”と小さく呟いた。そして傘を開くことなく家へ帰った。

―日向の君へ―

私はあの日からもずっと彼女を窓から見つづけていた。私は人を見た目で判断することがなくなった。ルーズソックスじゃないから真面目だとか、茶パツにピアスは嫌な子だとか。

そして夏休みに入り・・・

夏休みが終わり―――

今日はカラっと晴れた91日。暑い日差しに日焼け止めクリームも塗らず、私はスキップ交じりで学校への道を歩いていた。今日は学校へ行ったらまず彼女の教室へ行って話すんだ。彼女の教室は3館の4階・・・ドアを開けたら、そうね、、、

“「瞳ちゃん、おはよう!!」”

って明るく叫んでみるのもいいかしら。 そしたら彼女はきっと、

“「何かようか?」”

なんて冷たい口調で言うんだろうな。

想像するほど私の足取りは軽く進んでいた。

学校に着いて教室へ行っても、彼女の姿がもうないことを私は知らない。

一歩づつそのショックに近づいていく私はおめでたい奴なのであろう。

・・・しかし私は幸か不幸か

キキ――――――!!!!!

「わっ!」

私は目の前が真っ白になった。最後に見たのは黒いフルフェイスの男と、その男の真っ赤なバイク。青い空。テレビを切ったときのように上と下から黒い帯が出てきて、光が一筋になり、、、消えた。

私は幸か不幸か、、、彼女が消えたというショックを知ることはない。

日陰の君へあなたは私がいなくなったことに泣いてくれましたか?

高橋瞳。あなたは私がいなくなったことに何を感じましたか?

年を取ってからの他界は納得できるものだという。しかし綺麗な、そして突然の死はどうしてこうも憎いのでしょう。

私はもちろん知らないけれど、私の告別式のとき父はずっと涙をこらえていたという。しかし、火葬場の前で父は係員の前に立ちはだかった。

蓋を開けて私の頬を叩き出した。

父は私がいつしか流した涙より大粒のそれを流したのだった。

それは雨と共に流れ、誰かに伝わることはなかった。

「起きろ!千鳥起きろ!起きんかったら燃やされてしまうぞ!千鳥!!起きろ!」

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2007年4月 2日 (月)

*Other Side Of The FAVOR*

1月のなかば、私は道で飛んできた白いハトを掴み取った。

クシャ

しかし、その感覚は生き物ではなくただの紙切れだった。私は目がとても悪くて矯正なしでは人の顔を見ることもままならない。

しかしめがねをかけた姿はとてもブスなのです。

仕方なく、カバンからめがねを出してかけてみる。

「あっ、、、。」

そこには、私の知っている名前があった。

「ル~ルル~♪ルルル~♪・・・クシッ!」

私はこの雪に身を震わせながら、しかし鼻歌を歌って道を歩いていた。

キャッ

スキップ交じりだった私の足は網のドブ板にすくわれてぺたんと滑ってしまった。冬休みの日曜朝だったので人通りはほとんどなく、私は一人で笑いながら立ち上がり、湿ったスカートを払った。

スカート派な私の足は冷気に赤さを増していた。

そして先の信号が赤なのでゆっくりあるいていた私は面白い音に横道をのぞいた。

それはふんわりと積もった雪を圧縮する音であった。大きな雪玉が私のほうへ向かってきた。

大きな、といっても人の身丈ほどではなかったので押している人物は前を見れたはずだけど、あまりの重さに下を向いて腕に力を集中していたみたい。

ドン

それは軽く、ゆっくり私の体を押した。

何度か小石でこうして止まったのだろうか、人物は顔をあげることなくまだ押そうと精を出している。

「フフ。」

少したって耐え切れなかった私は思わず吹き出してしまった。

それが1年前の彼との出会い。

「ごめん。見てなかったんだ。ぬれた?」

雪玉を越して私を見た彼に、

私は一目ぼれしてしまった。

「いえっ!大丈夫です。あの、、これって何ですか?」

「雪だるまじゃん。」

「へぇ~。」

あまりにも大きくてこれを持ち上げられるのか、、、

きっと何も考えていないんだろうな。

私は気楽な人だと呆れてしまった。

「完成したら見にきてもいいですか?」

「いいよ!すげーのできてるよ。」

私は久々に大きな笑みを浮かべた。

私は中学2年生だった。

自分が大嫌い。名前も顔も性格も。

そんなことばかり考えているから余計嫌いになっていく・・・悪循環です。

次の日私は完成しただろう雪だるまを見に再びその道へ足を運んだ。

それは遠くからでも良くわかるほど大きかった。

私は首を横に倒してそれを見た。

そうしたら思わず笑いが込み上げてきて声をあげて笑った。

その雪だるまはぱっと見、大きな雪玉が2つ置いてあるようなのです。

でも、それは違っていて、雪だるま君は寝ているように置いてあるのだ。

やっぱりこの大きな雪玉は持ち上がらなかったみたいです。

「あっ。」

私はそれの手に掛けられた木の札に目を留めた。それには高校合格祈願と名前があった。

「へぇ~。」

結構有名な公立高校で、こんな受験シーズンに雪だるま君なんて作って遊んでいる場合ではないほどの競争率だ。

私はこの学校名を頭に刻んだ。

あの時、私はなぜその高校に行こうと決めたのかな。

今思えば、、、いや、あのときからそう思っていたよね。

初恋だった。

その恋を叶えたくて私はその高校を望むのだろう。

その紙は女の子の丸文字で書かれていた。

しかしラブレターなんていいものではない。パシリのような頼みごとだった。

しかし私が今いる場所は例の高校の前ではなく、他の学校だったのだが、何の疑問もなく歩き去った。

ただ、私はそのハトを手放すことをせずに握ったままとなっていた。

私は絶句した。自身があったからだ。

目標があれば勉強もはかどった。

彼に会いたい。

私は自分の受験番号が存在しない白いボードを力なく見つめていた。

不思議なことに涙はでてこない。

私は脱力した。

何も考えることができなくなるくらい沈んでいた。

まるで頭の上に重たい何かを乗せているかのよう。

私は家の都合もあり、どうしても公立狙いで、二次募集のあるところを受けた。そして、受かった。

私は何も感じない。嬉しいなんて思わない。

私は小さな合格発表のボードを背に歩き出した。

はぁ

思わず大きな溜息がもれる。ふと私は手帳に挟んでいた紙を出した。

どうしてこんなものを大事に持っていたのか自分でもよくわからなくて、複雑な気持ちがあった。

そしてそれを紙飛行機にすると私は大きな桜の木に向かって飛ばした。こんなどうでもいい動作に目標を作ってしまったのはいけなかった。その紙は木にあと少しというところで土の上へ落ちた。

本当にくだらないけど悲しい気持ちになって、やっと少しずつたまっていた涙が外へと出てきた。

「ゴミしちゃだめだろ?中学生。」

「・・・。」

後ろから声をかけられた。でも私は泣き顔を見られたくないと、振り向くこともせずに下を向いて固まった。

その人は、私にだんだん近づいてきて横を通った。

そして桜の近くで落ちた紙を拾った。

「落ちたのか?ごめん、変なときに声かけて。」

「いえ。」

私はその時に涙をぬぐって初めて顔を上げて彼を見た。

「あっ!!

私は驚きのあまり一歩後ずさり、気が付くと止まったはずの涙を再び流していた。

「おいおい、受かったんなら泣くなよ。ほら、泣くなって。」

彼は私をその胸に抱きしめるようにして背中をポンポンと叩いてくれた。そしてどのくらいたったのか、私の肩の揺れがおさまるとそっと引き離し、ハンカチを絞って私の腫れた目にあててくれた。

「、、、好きなんです。」

私はぼそりと呟くように言った。

「あなたのことが好きなんです。」

ハンカチを強く握り締めながら彼を見て叫んだ。

突然のことで彼は口を半開きにして絶句していた。

「ごめんなさい、急に。ごめんなさい。 でも本当なんです。好きなんです。それじゃあ!」

私は自分の顔がりんごのように赤く、そして火のように熱くなっているのがわかった。彼の手から飛行機を取って走り出した。

私は入学式の日、彼を探していた。

「おい!」

そして、それは彼も同じだった。

私たちは向き合ってまた無言でいた。先に話を切り出したのは彼の方であった。

「この前はごめんな。せっかく気持ち伝えてくれなのに何も言えなくて。」

「いえ、わたしこそ。・・・これ、ありがとうございました。」

私は借りっぱなしになっていたハンカチを彼の手へ届けた。

「私、先輩が好きなんです。もし良かったら付き合ってください、、、。」

「いいよ。」

彼は即答した。これにはさすがに私も驚いてつい聞き返してしまうほどだった。

「あの日から君のことが気になって。それに結構前に会ったことあったのも思い出したよ。」

あの雪の日に出会ったことを、彼も覚えていてくれたのだった。

そんな風に言われたら、自分のことが嫌いだった自分も悪くはなかったかもしれません。

こうして出会ったのは私なんだから。

その日は午前で下校なので、彼は私をバイクに乗せて遊びに連れて行ってくれた。

喫茶店で彼のことをいろいろ聞いたりしていた。それは前の彼女の話で・・・本当は嫌だと思うべきなのかもしれないけど、嫉妬心など生まれずに真剣に聞いていた。それはきっとその話がただの自慢話や、馴れ初め話ではなかったからなのだろう。

その彼女は付き合って3年がたつ頃、つまり去年の夏の終わりに消えたという。

私は例の日の話を聞いてみると、恥ずかしがりながら教えてくれた。

あの合格札は彼女の為に書いたものだったという。だから私の落ちた高校に通っていたのは彼ではなくて彼女なのだ。

そしてあの雪だるまも彼女の為に作ったもの。

「だからさ、俺は彼女のことを簡単に忘れることができないかもしれない。でも君のことを好きでいたいんだ。」

彼は真剣だった。私は正直迷った。

だって彼女に勝てるわけないじゃないですか。そんなの絶対に無理です。

でも、目標にしてもいいって少しだけ思ったのは彼が私のことを今はっきりと好きだと言ってくれたからだ。

「きっと私の方が先輩のこと好きですよ。」

「ありがとう。」

彼は私の為にタバコをやめた。

別に強制したわけじゃない。私が少し咳き込んだのを見てタバコが苦手だと気づいてくれたのだ。

私はショウウィンドウをチラリと見たら彼はそのお店に入ってくれる。

こんなドラマが好きだと言うと、彼もそれを見て面白いといってくれる。

学校のスポーツ大会では私の試合に必ず応援に来てくれる。

学校を休んだら携帯にメールをくれる。

そして早くも半年が過ぎて、秋がやってきた。彼の誕生日にプレゼントと一緒に渡すものがあった。きっと彼の彼女が私にくれたハトを返さなければならない。

なんとなくそう思ったから。

待ち合わせ場所へ行くと彼は友達と一緒だった。彼の性格とはまったく違うタイプに見える、真面目そうで華奢な感じです。

私は意識せずにプレゼントと紙飛行機を渡した。

「あの、これ中々渡せなくて・・・。」

「これって!!

彼より先に反応したのは友達の方だった。その人は彼からその紙を奪うようにして取って広げた。

そして気持ち震えた様子でそれを握り締めた。

「君が、これを拾っていてくれたんだね。ありがとう。」

涙が滲む顔で大きく微笑んだ。そのあとすぐに紙を返して走っていった。

受け取った彼もそれを見つめて微笑んだ。

「ありがとな。留美。」

「鷹巳先輩、、、。」

その日から鷹巳先輩はどんどん私への好意を大きくしていった。私の気持ちもわからずに。

その日から私は友人である明先輩に心が向いていった。彼の思いを無視して。

私たちは3人で遊ぶことが増えて、、、

未来私は明先輩と付き合うことになる。でもそれは今の私にも彼にも、もちろん明先輩にも知ることができない。

彼は彼女を忘れることはできない。

高橋瞳を消すことはできない。

消さない限り人からは本当に愛されない。だから彼は誰にも愛されない。

彼は友人を憎むことができない。

でも自分を憎むことはまた、できない。

きっと何もできない。

ずっと―――――できない。――――ない。

――――ない。

でもね、それはみんながそうなんだよね。

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2007年3月 1日 (木)

*Other Side Of The FACT*

Other Side Of The FACT

うちの子を殺したのはあの子よ。あの子さえいなければ!!

美那子が小学5年生で転校して、最初にできた友達があの子だった。転校1日目で新しい友達ができたと喜んで帰ってきた日のことは、今でもよく覚えている。

「お母さん!あのね、わたしもう友達できちゃった。」

この子はどちらかというと大人しいほうで、人見知りもするので朝も心配な気持ちで見送ったけれど、杞憂だったようだ。

「よかったわね。また家にも遊びに来てもらおうね。」

「うん。」

大きくうなずいて笑う美那子の頭を強くなでた。

美那子はいつも帰ってくるなり学校の話を楽しそうにした。

「ねぇ美那子、その子のほかには友達できたかな。」

「これからだもん。あっ、明日その子家に呼んでもいいかな。」

「いいわよ。じゃあお母さんパイ焼いて待ってるわ。」

次の日、美那子が学校から帰る時間に合わせてパイを焼いた。

「ただいま。」

「おじゃまします。」

玄関で音がすると同時にそこへ向かっていた私は“いらっしゃい”とすぐに迎えることができた。

「こんにちは。高橋瞳です。」

瞳ちゃんはすごくかわいい女の子だった。ただ、目が小学生とは思えない程の深さで、私はギンと見られると声が出なくなった。

「・・・。」

「どうしたの?お母さん。」

「えっ、なんでもないわ。かわいい子ね。」

私は何とか自分を取り戻して平静さを保った。

それから3人で、パイを食べながら話をした。

彼女は美那子を“みっこ”と呼んでいるらしい。明るくて面白い子。

あの目はきっと私の気のせいだったのだと少しずつ思えてきた。

いつの間にか5時をまわっていて彼女は時計を見た。

「私、そろそろ帰らなくちゃ。」

「あら本当。もうこんな時間。楽しくて忘れていたわ。」

私は美那子と彼女を玄関まで送った。そして彼女がドアを開けて出ようとした瞬間スッとこちらへ振り向いた。その時の目は、やっぱり―――

気のせいなんかじゃなかった・・・。

最初と同じ深く、そして濃い目が私の胸を貫いた。

「ゴミが付いてますよ。」

彼女はそういうとそっと私の肩に手を伸ばした。背が違ったので私は少ししゃがんだ姿勢になっていた。

「みっこって、病気とかなってませんか?たまにすごく苦しそう、、、。」

ゴミを掴む瞬間に耳元で彼女が呟いた。離れるときは少し目を細めて不適に口元を吊り上げた。

私は“えっ”と心の中で驚きの声を出して、その場に立ちすくんだ。

この子が病気? そんなはずは・・・

ゆっくり美那子を見てはみるけど、にっこりしながら彼女に手を振っている。

「おじゃましました。」

パタン

ドアが閉まってくその隙間から見える彼女の表情は悲しそうでもあり、同時にあきらめの色を見せていた。

二人にきりなって急に不安が現れた。

父親は仕事の関係で月に1度くらいしか帰ってこれず、この家は2人しかいない。

もし何かあったら、、、。

その日は美奈子の様子に気配りながら過ごしたが、結局何もなかった。

そもそもどうしてただの少女の言うことを間に受けたのかしら。あの子が見せた表情はもしかしたら悪戯っ子の笑みだったのかもしれなかった。

そして私はその悪戯に引っかかった。

それにしても、なんてひどい冗談だったの!!

しかしそれから1ヶ月がたとうとした頃、美那子が熱をだして病院へいくことになった。朝、呼んでもなかなか起きてこないので部屋へ行ってみたら、すごい汗だったのだ。

「では注射打ちますからね。」

美那子は看護師に連れられて処置室に入っていった。

「先生、、、風邪?ですよね?」

私は未だに気になってしまう冗談を消そうと確かめようとした。

「・・・。美那子ちゃんのお父さんは?」

「えっ?あの、1ヶ月に一度しか帰らないので、次は2週間しないと帰りませんが。何でしょう、私だけで聞けます。」

「そうですか。…実は少し重い病気で。美那子ちゃん日頃から苦しかったと思うのですが、そんな様子ありませんでしたか?」

――たまに苦しそう――

彼女の言葉が頭をよぎった。

「そんな。」

「おそらく半年くらい前には発病していたものと思われます。」

「治るんですか?!

「発見が早ければ治る確立も高かったかもしれませんが、、、もう、苦しみをとる薬を与えることしか。」

「いつまで生きられるんですか!」

「長くて、1年でしょう。」

それを聞いてから涙が溢れ出るのに時間は少しもかからなかった。何も考えられなくなって自分でも知らないほどの奇声を放っていた。呼吸も乱れてきていて私は精神安定剤を投与されて眠った。

そんな、、、美那子が死ぬなんて。

眠っていても私の目からは涙が流れていた。

パタン

「あっ、お母さんどこ行ってたの?ねぇどうして私入院なの?別に苦しくとも何ともないよ。」

「大丈夫よ美那子。軽い病気よ、絶対治るから安静にするのよ。」

「わかった。」

どうしてもっと早くに“苦しい”って言ってくれなかったのよ。そうすれば治ったかも知れないのに!

どうしてなのっ!!

病室に入って美那子の顔を見ると涙が出てきて、私はそれを必死にこらえながら会話をした。

美那子を責めるのはいけないわ。気が付かなかった私がいけないんだわ。

半年も、、、。

でも彼女はどうしてわかったの?

コンコン

「こんにちは。みっこ、大丈夫?」

一番最初にお見舞いに来たのはやっぱり彼女だった。ピンクの花束と花瓶を持ってきて、棚に飾ってくれた。

「キレー。ありがとう。」

「みっこ、どのくらい入院するの?」

「ん~とね、私がいい子にしていたらすぐってお母さんが言ってた。」

「・・・。」

私が言ったことを聞いて彼女の目がまた変わった。

帰るときに私も病室の外に一緒に出た。なんとなく最後に私を見た目が呼んでいるように見えたからである。

「すぐっていつ?」

「、、、どうしてなの?何でわかるの。私は気づかなかったのに。」

「そうですか?見ればわかりますけど。」

「ねぇ、お願いよ。あの子には言わないで!」

私はつい大声で叫ぶようになる。彼女は私が答えなくてもその雰囲気で美奈子の命の短さを悟ってしまった。

「どうして?本当に言わないの?」

「ダメなの!、、、もう、来ないで!!」

私は焦りのあまり彼女を追い出すように病院の外へ出していった。

「もっと考えてみてよ、おばさん!」

「早く帰って!」

私は思わず手に力が入り突き飛ばした。

ドサッ

「痛っ。」

砂利の上で転倒した彼女の足からは血が流れ出た。しかし私は起こそうともせず、背を向けてその場から去った。

それから2ヶ月ほどがたったとき、私が病室に行くと美那子が絵を描いていた。

「あらっ、どうしたの?絵の具とか。」

「ん?えっと、、、描き掛けの絵があるって言ったら持ってきてくれたの。」

誰が?

「まさか、、」

私の知らないうちに彼女はここに足を運んでいたというの?美那子は答えなかったけど、私は確信していた。それに、この2ヶ月美奈子の見舞いに来たのは担任の先生だけだったのだ。

「瞳ちゃんね?」

私は問いただすように言った。すると美那子はためらいながらも首を縦に振った。

「ねぇ、何か言ってた?」

「何かって?ん?何も、、、。」

「そう、ならいいのよ。何でもないわ。」

私の考えすぎだった。いくらあんな小学生離れしたような子でも美那子を目の前に真実を伝えることはできないだろう。

それからさらに3ヶ月。

ピ―――――――――

「最善は尽くしました。」

手術室のランプが消え、医師が下を向きながら出てきた。

「そんな…いや―――――――!!!!!

私は床に手をついて倒れた。涙はとめどなく流れて自分さえ溺れて、、、そして死んでしまいそうなほどだった。

ううん、死んでしまいたかった。

まだ、1年経ってないわよ。

私は誰に言い訳しているのだろう。1年の間に美那子には何かをしてあげたかったのに。それができなかった。

――お母さんへ

 この手紙を読んだとき、私は死んでると思います。ごめんね、一人にして。私はもう治らないのだということを知っていました。死ぬべくして死ぬのなら私は自分で死ぬのが自由だと思いました。だから泣かないで。泣かないでね、お母さん。瞳ちゃんにもよろしく。ありがとう。さようなら。   みっこ。――

「瞳ちゃん!どうして言ったのよ!あんたのせいで美那子は死んだのよ!」

私はなぜ美那子が知っていたのか、すぐにわかった。

「私は死ぬって知ってたら後悔しないで、幸せに死ねると思ったから。」

「死ぬのに幸せも何もないじゃない!死ぬことが不幸なのよ!!美那子がどれだけ悲しかったことか、あなたにはわかるっていうの?!

おかしいと思ったのよ“自分で死ぬことが自由”だなんて、そんな風な考えを持つ子ではなかった。そんなの小学生じゃない。

「あなたが美那子に言ったんでしょ!死んでしまえって、言ったんでしょ!!あんたが死ねばよかったのにっ!!!

自殺。

美那子は病院の屋上から飛び降りて死んだ。

発見されたときはまだ息があった。私の腕をすごい力で握りながら、

「瞳ちゃん。」

そういった。

体が震えだしてもう力が入らなかった。美那子が目を閉じたかと思うとだんだん冷たくなって、手術室に運ばれたけど・・・電気ショックも受けたけど・・・

助からなかった。

美那子を殺したのはあの子よ!

2年が過ぎた。

美那子が死んだあとすぐに離婚し、今は一人で生きている。

あのときのことを、何度も何度も思い出すたびに怒りが込み上げてきていたのに最近になって少し収まってきた。なぜ?私が美那子を忘れかけているからなのか。それとも真実が見えてきたからなのだろうか。

いや、真実なんてどこにもない。美那子は、、、殺されたのよ。

私はあの子を一生許しはしない。

でもいつか、わかるときが来るかもしれない。わかったとしても許さない。美那子が死んだのは事実。誰が正しかったかなんて考えない。

私は美奈子のことだけを考えて、彼女のことだけを憎む…

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2007年2月 1日 (木)

*Other Side Of The FINE*

もし、明日本当に晴れたら、私はまたこの場所に来ると思う。

彼女がそう言ったとき、私は何故また彼女と会えることを確信してしまったのか。

こんな梅雨の真っ只中に…晴れ間が差し込むと。

「もう一度、、、会い、、た、い。」

足音が波のようにざわめく。

「滝沢さん、今日も雨ですね。散歩は玄関まででいいですか?」

「はい。ありがとう、看護婦さん。」

私は車椅子に乗って病院で生活している。入院してから1年と半年間、晴れた日は毎日のように散歩に出て木陰で本を読んでいる。今の時期は丁度梅雨の真っ只中で、ここ1週間は日課が果たせていない。

玄関に車椅子を止めて私は、雨の放たれる先をじっと眺めていた。今日は少し冷えるようで、私は少し身を縮めた。その時私の肩が再び伸びた。その原因の温かいものはたぶん手編みであろう、毛糸のかた掛けのようなものだった。

「おばあちゃん、よかったら使って下さい。」

私が振り向くすきもなく声の主は姿を消した。

肩掛けには微かな花の香りが残っていた。

今日は看護婦さんが忙しく、自分で玄関まででてくることにした。

この年だから腕の力も大分衰えていて自分の体重のタイヤを動かすのがかなり困難であった。

3階の病室からエレベーターに乗るところで私はまた難関にぶつかった。

エレベーター前のほんの少しの段差が越えられないのである。

私がそうこうしているうちに、折角開いていたドアが閉まっていくのが見え、私は諦めて回り道をしていこうと思った。

「待って!」

私の後ろから声がしたと思うと私の乗った車椅子がまるで坂道を走るように前へ進みだした。完全に閉まりかけていたドアはその声によって再び開かれた。

車椅子を押す正体がボタンを押してくれた人に

「すみません。」

と声をかけながら私と共に敷居をまたいだ。

「ありがとう。」

私はその正体である彼女の顔を始めて見た。まだ中学生か高校生くらいのかわいい女の子だった。その子は微かに花の香りを漂わせていた。

ピン

エレベーターのドアが1階で開くと彼女は私を玄関の近くまで押してくれてようやく手を離した。

「迷惑でしたか?」

「いいえ、ありがとう。あなた昨日これを掛けてくれた子だね。本当にありがとう。」

私は膝に持っていたそれを彼女の手に返した。しかし彼女は再び私の肩に掛けてこう言った。

「今日は昨日よりも寒いです。これ、お貸しします。」

「まぁ。ありがとう。あなた名前は何と言うの?」

「瞳です。」

「瞳ちゃん。かわいい名前ね。ねぇ,今日はお暇かしら。良かったらこの年寄りと話をさせておくれ。」

「いいですよ。」

彼女は快く返事をくれた。

彼女は高校1年生になったばかりの年だという。

「私の息子は今年卒業して専門学校へ行ってるのよ。なんだか不良みたいになっちゃっててね。なかなか会いに来てくれなかったのよ。でも私が入院したって聞いて久々に会ってみたら今は絵の勉強が忙しかったんだって。遊び歩いていると思っていたのにいつの間にかね。不思議でしょう?」

「人は、何をするにもちゃんとした理由を持っています。悪いことでも、悪いってわかっていてするんです。それが悪いということは事実だけど、真実ではないと思うんです。だからもし不良だったとしても、次の道を見つけられたその人は他の人よりも何倍もの勇気があると私は思います。」

私はあっけにとられた。彼女の言う意味が半分も理解できない。こればかりは年のせいにも出来ず、私は首をかしげた。彼女はバカにせずに

「だから、過去のことは忘れて今の彼を応援してあげるんですよ。」

とニッコリ笑った。難しいけどなんとなくわかる。彼女の言葉は素晴らしかった。

私たちのおしゃべりは家族のこと、学校のこと、昔のこと、未来のことと話題は尽きずに何時間も続いた。

私はきっともう治らない病気なのだろう。病名を教えてくれないのがその証拠。せめて隠すなら軽い病気の名前でも言ってくれればばかな私は気づかなかったはずなのに。

コンコン

「ばーちゃん、入るよ。」

「よく来たね。まぁ何だい、その髪の赤色は!あんた何人だいっ!!

忙しいと言いながらも気が付くと週に一度は着てくれるようになった孫だが、どうも流行なのか髪の色が落ち着かない。喜ぶ前につい叱ってしまう。

「、、、まぁまぁ、今度直すからよ。青ならどう?」

「ばか言うんじゃないって!」

「ウソだよ、ウソ!んな色にしたらばあちゃんびっくりして心臓止まっちまうって。」

「今日の赤でも止まりそうだったわ。」

彼女と会ってから若いこの気持ちが少しわかるようになって、孫との会話も続く。

「絵の勉強がんばってるかい?今度おばあちゃんをモデルにしてくれよ。」

「俺は花と美人しか描かないんだよ。ま、元美人ってことで描いてやってもいいけどな。」

格好はどんなでも優しいいい子だってわかっていれば大丈夫。

信じていれば大丈夫。

彼女の言葉は何て大きいんでしょう。

「んじゃ、帰る。また来るからっ。」

「ありがとう。」

パタン

彼は笑顔を残して帰っていった。

本当はいいんだ、赤い髪だってお前なら何でも似合ってるよ。

コンコン

「はい?」

「こんにちは、瞳です。」

「まぁ、よく来てくれたわ。」

「あの、今この部屋から出て行った人って、、、。」

「私の孫ですよ。赤い髪になっていたわ。ウフフ」

「、、、。」

彼女はどこからか摘んできた花を、私の部屋にある空の花瓶に指してくれた。

花からは水滴が流れている。今日も外は雨。

きょうの彼女との話は孫のことばかりになった。

周りは彼を見るだけで、大変なお孫さんですね。などと格好だけで同情される。でも彼女は違う。いいところを話すとパアっと明るい顔をして、、、私も自慢し甲斐があるってもんだ。

彼の書いた絵だと壁にかけてある額を指差すと、それに見入っている様子もまた私を嬉しくさせた。

彼女が帰っていくのを私は玄関まで見送った。

「あの、滝沢さん。私、明日から来れないかもしれない。今日が最後、、、になりそう。」

「えっ、、、瞳ちゃん。」

「ごめんなさい。でもすごく楽しかったよ。」

「いやだわ、お願いよ――あと1日だけでも、、、明日はきっと晴れるわ。だから!そう、まだお礼だって何一つ…お願いよ。」

私は突然の別れに耐え切れず車椅子から立ち上がった。しかしすぐに足がもたずにその場へ崩れた。

「しっかり、、、」

「瞳ちゃん。」

「、、、わかった。もし、明日本当に晴れたら、私はまたこの場所に来ると思う。」

彼女は遠い雨の先を見つめて優しく言った。

次の日の朝、雨は降っていなかった。しかし太陽も見えてはいない。

私は少しの期待を胸に彼女へのプレゼントを持って玄関へ向かっていたが…

私は何故また彼女と会えることを確信してしまったんだろう。

雲が少しずつ切れていくのが遠目で見えた。

晴れたら会えると…

足音がざわめく

目を閉じかけて、、でも必死に開こうとして―――うっすらの視界に写っているのは孫の、、、稔の顔。ここで閉じることは、永久に閉じることだとわかっていた。太陽を見たいけど、でも、、、もう、、、。

「もう一度、、、会い、、た、、い。」

パタン

担架で運ばれている途中でさえもしっかり抱きしめていたプレゼントがとうとう私の手から床へすべり落ちた。

薄い布で包んであるそれは、彼女の似顔絵。

稔、、、おばあちゃんも昔絵を描いていたのよ。

血は争えないわね。

正直驚いたものあなたが絵を描きたいんだって言ったとき…

ここからは私の知らない話。

私が息を引き取ったあと、彼はその絵を見るやいなや表情を変え走り出した。

再び降っていた雨の音がする玄関へ、、、。

しかし、不思議なことに彼が辿り着いたときに空にあるのは黒い雲ではなく…

眩しい太陽だった。

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2007年1月 6日 (土)

*Other Side Of The PROGREM*

君はこの白いキャンバスに何を描く?

自分は美術科教師暦13年。今は中学の2年5組の担任をしている。去年は1年1組を担任していて、隣のクラスにある意味で心配な奴がいるとの話は少し耳にはさんだ程度に知っていた。そんなくらいだからそれがというのが男なのか女なのか、もちろん顔も知る機会はなかった。

しかし2年にあがったとき、自分のクラスにそれがいた。最初は気付かなかった。自分は人柄もいいといわれ、他の先生方から保護者にまでそれなりの信用は得ていて、一般に問題児と呼ばれる子供たちはできるだけ自分のクラスへと集められた。今年からはそれに、彼女が加わったということだった。自分でそうしたいと言い出したわけではない。ただこの頃は自信があった。これが自信というものかどうかは後になればあやふやだが、とにかく人一人一人と向き合う精神があり、それを常に実行していたということだ。

初日から堂々と遅刻をしてきた女子生徒がいた。午前中授業が続く中、彼女はパーフェクトに遅刻を重ねていった。毎日その子の幼馴染の親友が迎えに行ってはいるものの、彼女は一緒にくることはなかった。彼女の彼氏も同じクラスだったがまるで関心がないようだ。

2週間位たった時、その彼女が新しく加わった心配な奴なのだということに薄々感づいた。しかし遅刻してくる彼女はいつも元気だった。悪びれるようすもなく、遅刻してきても職員室によらず勝手に授業へ入る程のマナー知らずでもあった。ただの怠け者で素行が悪いだけではないか?学校では授業でうるさいと先生に注意されることも多くて他の先生から苦情もきているほどだった。

更に1ヶ月が経つと今度は遅刻に加えて昼からの早退を繰り返した。しかし、この頃に少し変わったのは彼女の元気が薄れていったことだった。あまり口もきかなくなって休みも増え始めた。それでも、自分の授業には必ず出てくれていた。絵を描いてきて行き詰まると自分で考える前にでもすぐ自分のところへ来ていた。

「先生、私赤好きなんで赤系使いたいんですけど、ここは何色が合うと思います?

「ん~そーだなぁ・・・」

彼女の絵はいつも紙いっぱいに描かれていた。何かから抜け出したいという心理からこんな風に絵に表れることがあるといつしか聞いたことがある。彼女がその例なのか、はっきりとはわからない。赤、ピンク、オレンジと彼女の色使いは現実離れをしていた。写生をしても色をつけるとその系統で色づけされてしまう。“こういう絵は写生と言わないんだ”と自分の言葉はいつも無視だ。描きはじめる前は周りとの会話に夢中でうるさくしているが、一度描きはじめると誰も声を掛けがたい集中力…目が違う。

「赤ベースの中に一つ全く違った色をポンっともってくると、強調的な絵になるぞ?」

「別に強調的な絵にしたいわけじゃないですから。」

彼女は少し声を低くしてそう言い放つと、席へと戻ろうとした。

「ま、まてまて。わかった。これだとなぁ、オレンジと赤を混ぜたのを使うと綺麗だな。」

「ありがとうございます。」

今度は機嫌よく言うと、赤貸してくださいと自分の絵の具に手を出した。

その時――

彼女は赤色をすぐに見つけ出して席へ戻っていった。

でも自分が見たものは、、、

“リストカット”

はっきりと見えた。彼女の左手首から腕にかけていくつものキズがあった。新しい傷になるたびにだんだんと深くそして長くなっていた。

“彼女は危ない”

そう感じても自分にはどうすることもできなかった。

彼女の絵はいつもすばらしい。しかし、いつも何かが欠けていて印象に残らない。

いつの間にか忘れてしまいそうな、そんな感じだ。忘れてくださいと、そう語りかけてくるようでもあった彼女の絵に自分がAという評価を下すことはなかった。

何もできないまま夏休みを迎えることになった。2学期彼女は生きているのだろうか。そんな最悪の場合が考えられるというのに、自分は結局なにも行動できなかった。自分は、教師をしてきてこんなに自信をなくしたことはなかった。どんな問題がある生徒でも自分と話せば自然と理解しあえた。でも、何故だか彼女と話したら負けてしまいそうなそんな気がして、話すことすら避けていたのかもしれない。

8月に入って彼女から暑中見舞いが送られて来た。その絵葉書を見て自分は驚いた。描かれたひまわりの絵は茎も葉も花も赤系で塗られていたが、その中の一枚の花びらだけが黄色で塗られていた。

彼女はまだ生きている。その証拠が今自分の手元にあることが喜びだった。

2学期に入ってもまだ遅刻記録は更新されていった。

更に何もできず彼女とその周りの分析をするだけで、3年生になった。もちろん引き続き自分のクラスに彼女はいる。

ある日彼女が保健室へ行ったことをきっかけに自体は急変する。

その時自分は保健の谷口先生に呼ばれて彼女の元へ向かった。

「うるせぇなぁ。自分でやったんじゃねぇよ!!

「じゃあ答えられるでしょう!どうしたのよ、この傷は!」

自分が保健室の前まで来たとき、彼女達の会話が聞こえてきた。彼女のいつもからは想像できないような暴言、、、この中にいるのは本当に…?

少し不安が心をよぎった。いつも自分が見ている彼女が本当ではなかったら。この中にいる彼女が本物で全くの偽者に関わっていただけだったら。一体何を信じればいいのかと…。

コンコン

自分は意を決してドアに手をかけた。入ってみると、何てことはない。ベッドで布団にくるまり丸くなっているものを谷口先生が引っ張っているという、以外に愉快な格好だった。

「瞳?何してんだ?」

「久保田先生っっ。」

自分が声をかけると、彼女は先ほど漏れていた声とは180度違う声と共に起き上がった。そして顔を確認してニコリと笑った。

彼女が体育で突き指をして、保健室で手当てをしているときに谷口先生が手首にある無数の傷跡に気づいてしまったのである。

しかし自分は思い返してみるともっと前から知っていた…。

普通だったらそのときに“どうしたんだ?”と声をかけて彼女を癒さなければならなかったのだ。自分にその勇気がもてなかったことを改めて後悔した。

その場は彼女も嫌がるので保健室から出て、美術室へ変えた。彼女はその途中自分の横を笑顔で歩く。その速度はスキップしているかのような感じでもある。

「瞳、、、その傷痛くないか?」

「うん。“何でそんなことしたんだっ!!”。」

彼女は自分自身を叱るような大きな声を張り上げた。

「“何でそんなことしたんだ。”、“何かあったのか。”それだけ。私のことなんて心配してない。知りたいだけならいくらでも教えてやるけどな。“やりたいからやった。”、“別に何もない。”って。でも虚しいだけ。先生は違う。 この傷は全く痛くないんだよ。痛いのは、もっと痛いのはきっとここだよ。」

両手で左胸に手をあてた。

「私はどうして生まれてきたの?わからない。誰もわからないよ。でも、誰もが知りたいと思ってる。考えるとどうしようもなくて、、、すごく恐くて、、、寂しい。」

「君はこの白いキャンバスに何を描く?」

自分は近くに置いてあったそれを手にとって彼女へ差し出した。

「わからない。」

彼女はそう即答した。だが、その手はキャンバスを力強く受け取っていた。

「自分は何で生まれてきたんだろう。もし一つの理由として、、、瞳にコレを渡すためだったとしたら、瞳は同じ一つの理由として自分からコレを受け取るために生まれてきた。そう考えるのはただの自己満足か?」

彼女は目に涙をためて大きく首を横に振った。そしてその白いキャンバスを旨に抱いた。

「私…もうしないよ。何かを描きたいから。」

彼女は変わった。その日から無遅刻無欠席で、、、有名な高校を受験した。推薦はさすがに落ちたが、“一般でがんばります。”とそれを叶えた。

一つ気になっていたことは、2年生の初めに他のクラスへ転校してきた子との接触。彼はどうも中学生の雰囲気とはまるで違っている。目は悪く言えば死んでいるようでもある。そんな彼がしきりに彼女を気にしている。そしてたまに話している様子もあった。しかし、今となっては取り越し苦労だったようだ。

さぁ。瞳はこの白いキャンバスに何を描く?

白いキャンバスにいつ!描く?

完成したとき彼女の問題は全て解決するだろう。彼女の心の傷は癒えるだろう。

そう想った。

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2006年12月 1日 (金)

*Other Side Of The YESTERDAY*

俺に大切なモノはなにもない。

俺に夢なんてない。

俺は何も望んでなどいないし、望むつもりのない。

いくら飾ろうとしても本当の俺はこんなだから、飾るのも無意味。

この世の“大切なモノ”がある人、、、なぁ、教えてくれよ。

大切って何だろうな?

ゴ――――ン  ゴ――――ン

除夜の鐘が鳴り響く境内。大勢の参拝客―

人ゴミに押されて俺は階段の端にある植え込みへ足を落とした。

パリ

俺は自分の膝がついたところにあった何かの音を聞いた。足を見るとそこにあったのは手鏡で、俺の足からは血が出ていた。なんとなくムカついて俺はそれを思い切り蹴飛ばした。

「ったく!…痛ってぇ。」

俺はこの神社の近所で何も持たずに出てきていたため何かで血を拭うこともできなかった。

「ねぇ、こっち座って。」

急に手を引かれて俺は倒れかけそうな体勢のケンケンで言われるまま大きな石の上に座った。その声の女の子はハンカチを濡らして血を丁寧に拭いたあと止血してくれた。

俺より一つ年上で、眼鏡をかけた顔がまた大人っぽさを引き立てている。

「悪ィな。」

「放っておけなくてね、こういうの。それに人間の血なんて見てて気持ちいいものじゃないからな。」

初めの印象と違って随分嫌味なことを言う。

「お前何してたんだ?こんなとこ女独りじゃ危ないよ。」

「…探しモノかな。」

彼女は眼鏡を外すと束ねていた髪をほどいた。

「でも今日はもういいの。寝る。」

「探し物?、、、おい!寝るってまさかここで?!

「うん。疲れちゃったの、、、ん、、。」

俺が慌てる暇もなく彼女は目を閉じてしまった。

本気なのだろうか。

よく考えてみるとこの近くの人というわけでもなさそうだし、何より冬にしてはだいぶ薄着のようだった。

「…なんなんだ?いったい。」

俺は結局放って帰ることができず、自分のコートを彼女にかけて、座っていた石を背もたれに一緒に眠りに着いた。

翌朝起きたとき俺は一人だった。

彼女の姿はない。俺は思い出したように立ち上がると、昨晩よりまばらになった客の間をぬぐって神様の前にでた。お金を投げ入れるふりだけをして、適当に手を打った。頭も下げずに手を合わせ、またパンパンと手をうった。

願いなんてない。ただこれは毎年しているから今年もするだけで、しないと変だからで、、、かったるい。

家に帰ると俺はやっぱり親に叱られた。

口では心配したなんて言ってるけどあんな近いところだったんだし、本当に心配なら見にくるぐらいするよな、、、。

ハァ

俺は別に好きでもない雑煮を何個も食べて、そしてベッドに転がった。

そういや、俺のコート。

夕方になると俺は机に向かっていた。そう、俺は受験生の身なのである。それで今年は親に合格祈願をするように言われていた。

「やべぇ、現代文の勉強道具塾だ。」

カバンを逆さにふりながら俺は肩を落とした。最後に塾にいったのは27日。今から5日前からずっと勉強をサボっていたことを自覚した。

「ん?」

俺が自分の手に目をやるとそのヒラにはペンで何かが書いてあった。何でこんなのに1日も気付かなかったのかが不思議なくらい大きな字だ。

“また来てね☆”

もちろん彼女が書いたものだ。

俺はとりあえず塾へ教科書を取りに行った帰りに神社へ足を運んだ。

随分と静かで風にゆれる葉の音が俺を包むように広がっていた。

「いねぇじゃん。」

何だか変な気持ちになった。

大好きな野球の試合が雨で中止になってしまったというような、、すごくがっかりした感じ。

「遅いよ。」

次の瞬間変な気持ちが綺麗に塗り替えられたのは言うまでもない。

俺は零れ落ちそうな笑みを我慢して振り返った。

「このコートありがとう。」

彼女は綺麗に畳んだそれを俺の手に渡した。

「ん、それ教科書?見かけによらず勉強好きの優等生君だったの?あっ、現国3ってことは受験生じゃんっ!懐かしいな~ちょっと見せて。」

彼女はぺらぺらと教科書をめくった。

目が悪いのかいつのまにか眼鏡を掛けて石の上に座っていた。

「あんたは受験終わったってこと?」

「そう、去年。こう見えても有名な県立高校行ってたんだけどな。勉強、私が教えてあげようか。」

「うん。」

俺は即答した。俺は彼女が気になる。完全に意識している。

…正直に言えば惚れた。ただそれだけだ。

3週間はあっという間に過ぎていった。こんなに地球が早く回ることを俺は初めて知った。

彼女は本当に頭がいいらしい。教え方も上手くてどんな質問にも簡潔に答えてくれる。何か不思議な人だ。

不思議といえば彼女の表情は眼鏡を掛けると顔つきがまるで別人のようになる。気のせいだろうか性格まで代わっているように感じるほどだ。

そういえば彼女は高1なんだよな。もう学校の冬休みは明けているはずだ。

「聞いてる?」

「えっ、ああごめん。何だっけ?」

「やる気ある?随分と伸びて来てるけどさ、気がないなら下がるよ?」

「あの…さぁ、今更言うのは何なんだけど、俺別に行きたいとこあるわけじゃないんだよね。ただ行くのが普通だから勉強しないとって感じで。」

俺は怒られるのを覚悟で本音を言った。

「いいじゃん、それで。行ってから何したいか探したって遅くないし。決めないと進んじゃだめっていう決まりはないから。」

彼女は意外な返事を返してきた。その表情から分かるのはきっと彼女もそうだったんだろうということ。夢とか何もなくてただなんとなく勉強して高校行って、、、やりたいこと探せたのかな。

「そういえば初めてあったとき探し物してるって言ってなかった?」

「ああ、今もまだ探してる。大切なモノ。」

大切なモノって何だ。

俺はそう何度も思ってきた。今彼女からその言葉を聞いて彼女ならばそれに答えるすべを持っているかも知れないと思った。

でもナゼだか聞くことはできなかった。

ただ俺達のこの関係は長く続きはしない。俺はそのことにずっと前から気づいていたのだ。

「なぁ、名前教えてくれよ。何で言わないんだよ?」

「、、、。教えてあげる。っていうのもいいけど、必要ないみたい。私明日からここ来れないから。お別れだねヒロシ君。」

俺はその別れを心では十分に理解していた。でも、認めたらまた…いつものつまらない日々が戻ってくるのだと知っていた。だから、

「だめだ。」

「なーに、子供みたいに。」

「だめなんだよ!お前がいてくれないと。お前は俺のっ!!

続く言葉が見つけられずに俺は詰まると彼女をぐっと抱き寄せてキスをした。

彼女に反応はない。俺は急に恥ずかしくなて背を向けた。

「ヒロシ君。 鏡はもうあきらめたんだ。だから行かなくちゃ。」

「鏡だって?!

それが彼女の大切なモノ!

俺ははっと思い出した。俺はそれを知っているんだ。彼女に会う前から。

「俺探してくる。もし、見つけられたら、もう少しでいい、ここにいてくれ!」

彼女の返事を聞かずに俺は叢に分け入った。

俺は焦ってわけではない。なんとなくこの感情は怒りに似ていた。

あきらめるって何だよ、大切なモノだったんだろ!

そんな簡単にあきらめんなよ!!

ひたすら植木の間に目をやり地を這うようにして探した。

行かないでくれ、お前は俺の、、、大切な人…。

「あっ!!」

俺は膝を何かで擦ってその痛みに覚えがあった。赤い血の指すものは赤い手鏡。花の絵が描いてあって“アイ”。確かにそう書いてある。

「アイ!あったよ、アイ!!

俺は割れた鏡を手に握り締めて数時間前の場所に戻った。

「アイ?」

そこに彼女の姿はない。どこにもぬくもりさえない。いったいいつからこの空間は俺一人だったのだろうか。彼女は何処へ?

彼女と二度と会えない。

「、、、明日って言ったじゃねぇかっっ!」

真っ黒の空の下どこかの家で柱時計が時を刻む。それが12回の金を鳴らしているのに知ることはなかった。

ゴーン ゴーン ゴーン

12回目が響いた時俺の周りから音が消えた。静寂の夜。

大切なモノはわからない。だから何だって言うんだ。

これからわかっていけばいい。望みなんて小さな幸せでいい。

静寂の夜。  夢を探そうと思った。

探せるあの鏡を探した時のようにただがむしゃらに何かの為に。

俺は受験勉強に励んだ。机の片隅には割れた鏡がいくつかの俺を写していた。

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2006年11月 1日 (水)

*Other Side Of The PAST*

もしもアイツに会ってなかったら、

俺はあの日のまま動けずにいただろう。

もしもアイツに会ってなかったら、

俺はあの日のまま、、、永遠を迎えただろう。

あの頃の俺は、中3のくせにバイクにまたがってチームをかかえていた。

特に何をする訳でもなく、ただ昼間から集まって少し空いた道路を走っているだけだった。

楽しいと思ったことなんてなかった。

すっきりはしてた。

稔と言う名前からトシと名乗って、15歳なのに帽子で顔を隠して20歳だと言っていた。

トシが何かをするたび、俺の中にあったものが消えていくみたいでワクワクした。違う存在となっていることが、開放されていると感じられてスッキリしてた。

その頃アイツは小6で突然俺の目の前に現れた。

 今はあれから約4年が過ぎようとしてて、俺は引越しの準備で部屋から出てきた一枚の絵をみてアイツのことを鮮明に思い出した。

俺は仲間を引き連れて、隣町の公園でたまっていた。

コンビニで買ったものを昼食にして、騒いでいた。

バイクは、いつも通り、公園の前にバラバラに置いていた。近所の奴等は恐がって注意しようともしなかった。

注意してきたところで聞くつもりなんてサラサラないけど。

昼の時間あたりになると、いつもそこを通る小学生がいる。

俺たちはつまずきそうにバイクを避けて歩くソイツを笑っていた。

「来た来た。」

仲間の一人が木の間から、歩いてくるソイツを発見して言った。

「いつもご苦労だね。」

「つまずくんじゃねーぞ、コラっ。」

「避けなくてもいいんだぜ? 拭いてってくれるならな。」

ハハハハハハ

俺は声をふっかけるのはあまり好きじゃないし、いつも黙って見ていた。皆ヒマなんだろう、今日はいつもよりあおっているみたいだった。

「トシさん、あのガキこっち向かってくるぜ?」

何を考えているんだか、注意しようって訳じゃないだろうけど。

これはマズかった。別に俺は縄張り争いするためにチーム作った訳じゃないし、ケンカしたい訳でも、もちろん人を殴りたい訳では全くないのだ。

とりあえず不信感を抱かれないように軽く2,3発殴って泣かせてやればいいだろう。

それでソイツも懲りるだろうと考えて、俺は他の奴に手を出さないよう命令し、ソイツがここに着くのを待った。

「よぉ、ガキ。何のようだ?」

「―――だよ、、ウザイっつってんだよ!この猿達がよおっ!公園来るならシーソーにでも乗って遊んでろよ、このサルっっ!」

俺は内心驚いていた。

俺だけではないはず、彼女に弱々しい印象を持っていたのは。

でも俺以外の奴等は驚きよりも先に、血が頭に上っていってるようだった。

ここは早くコイツを返した方がいい。

「うるせえ、殺すぞっ!てめえこそ学校で算数でも習ってろよ。」

ソイツを取り囲むような形になって、俺は手をふり上げた。

“やっちまえ”と声が飛び交う中、俺はもう一度彼女の顔を見た。

その時の瞳は俺を尽きるまで吸い込んでいきそうな迫力だった。

その奥は悲しそうで、とにかくソイツの目は俺には耐えられなかった。

バシッ

自分でもびっくりするような音がした。

俺は考えていた手加減など忘れて、彼女の頬を撃ったようだ。

彼女の瞳は何一つ変わらず俺の目を貫いていた。

「いいかげんにしろよ、このタコっ!忠告してやろうってんだよ。コイツをキレさせたらテメー等皆殺しなんだよ!!」

彼女はよりいっそう眼をきつくした。

「いい度胸してんじゃん。面しれえ、気に入った。」

俺は正気に戻ったとき彼女に手をさしだした。

まだ手がジンジンとして感覚が変だった。

彼女はそれをしっかりと握った。

「俺はトシ。ココのチーム、“DOREDOM”のリーダー。」

「私また来る。またねっ。  あっ、そーそーさっきの一発はいつか絶テーかまし返してやるから覚えとけよ?」

普通に立ち去った。納得できていない奴等もいたけど、俺の近くにいて彼女をはっきりとみた者達は何も言わずに了承した。

彼女は、小学生とは思えないほどの美しさだった。

顔とかそう言うんじゃなくて、

何か美しかった。

それから彼女は毎日この公園で俺達とたむろうようになっていった。

俺が、トシは嘘の名前だと言うと、彼女はじゃあ私もっと言って、アイと名乗った。

「アイは何で毎日昼に帰って来るんだ?」

「さあ、内緒~。」

「気になるじゃん。教えろよ、仲間だろ?」

「んん__あっタバコ切れた。 “プ○ィート”買ってきてくれたら、少~し教えたげる。」

彼女はビールの空き缶に吸殻を入れながら俺に財布をさしだした。

「俺おごるって。」

彼女といると楽しいし、チームの仲間とも馴染んでいる。

最初は“何であんなガキ!”とか言ってた奴も、一度話をしてみるとコロっと態度を変えていった。

彼女の瞳と言葉は誰をも飲み込んでいく。

今時の小学6年生ってこんなもんなのかと驚かされる。

俺はタバコを買った帰りに、菖蒲祭りの張り紙を見た。

毎年ショボイと思っていた催し物で、今もショボイと思ったハズなのに、俺は祭りの日を確認していた。

「ホレっ。」

「サンキュ。」

「あのさ、次の日曜菖蒲祭りとかあるみたいだぜ?  って興味ないか。」

「えっ、そんなことないよ!行きたい。トシ、誘ってくれてるんでしょっ?」

俺はテレながら頷くと、彼女はニッコリ笑った。

「日曜にココ11時位でOK?私明日はここ来ないから。」

「何かあんの?まあいいや。解った。」

「じゃあね。」

今日はいつもより早く帰っていった。

会ってから2ヶ月、日曜以外で彼女に会わない時はなかったのに・・・。って、別に大したことじゃないケド。

それは不思議な感覚だった。

彼女がいないと、静かだった。

何をしていたらいいのかわからなくて、一日を暮らすのがこんなに憂鬱なのだと思いしらされた。

もう、こんな気持ちになるのは嫌だと思った。でも、

いつのまに、、、こんな、想うようになってたんだろう。

「おまたせ、トシっ。」

そう言って、俺の肩を軽くたたいた彼女はいつもと違う雰囲気だった。

いつも一つにまとめている髪をながしているのと、服のイメージが変わったのとで大人っぽかった。

「ねえトシ、写生して賞とるとネーム入りのカワイイ手鏡貰えるんだって。」

「へぇ。・・欲しいのか?」

彼女はコクリとうなずくと、写生用の用紙を配っている係りのおじさんの所へ俺の背をおしていった。

一枚受け取ると、さっそくいい場所を探し始めた。

「なぁ、まさか俺に描けってんじゃねえだろうな?美術の授業なんて全然出てねえぞ?」

「授業?」

「っっ、イヤあの、中学の頃の話な。」

現在形っぽく話してしまったのを、焦りながらもいいわけした。

「ふたりで描くのっ。えんぴつならあるし。」

彼女のかけている小さなカバンの中から鉛筆を1本だした。カラーはなかった。

俺は借りてくるか?と訪ねたけど、彼女は首を振った。

「トシ、あの菖蒲描いて。私はその周りを後で描くから。」

「えっ、マジかよ。」

俺は緊張しながら紙に鉛筆を下ろした。

消しゴムがないことが更に、緊張を増幅させた。

「なぁ、お前双子だったりする? それか・・・二重人格――」

「えっ、どうして?」

「初めて会ったアイと今のアイが別人だから。」

俺は最後の方は冗談ぽく言ってみた。

「やっぱな、いつか言われると思ったぜ。」

「それだよそれ!口調も全然違うし、わざとだったら違和感出るはずだし、何より目が別人すぎ。」

「で、お前的にどっちがいい?」

俺は黙った。今の方がいいって思っているのに、その本人の前で言えるはずがない。

「まっ、いいや。教えてやるよ。」

用紙が彼女の手に渡って、彼女は手を動かしながら話し始めた。

「コイツは怒りって感情が薄いみたいなんだ。でも、一定を超えると急に爆発する。かなり危なくて・・。初めて私が出てきたのは、幼稚園の時だったかな。解ると思うけど怒りっぽいよな。コイツの変わりに怒る。コイツが爆発する前に相手に忠告するため。最近では普通の時もこうして存在してれるんだ。」

「ってことは、今がダミー?」

「ああ、悔しいけどな。私には私だけの意思があると思ってるのに。」

俺は少しがっかりした。

彼女の方がダミーだということは、俺は

「一コの体に魂が二つ入ってるみたいな?」

「そーゆーのとはちょっと違うかな。コイツが何かしてても私だし、私が何かしててもこいつなんだ。」

「わっかんねぇなぁ、本ト。俺は――」

「できたよ、トシっ☆」

気付くと俺の目の前に絵が差し出されていた。

黒だけとは思えない美しさだった。

「すげぇ、お前上手いなっ。」

「違うよ、トシの絵がいいんだよ。ほら見て、私が描いたのよりすごい存在感。圧倒されるよ。」

俺の絵が?

そういえば、よく見ると。自分で言うのも何だけど、スゴイ。

これを自分が描いたというのが不思議だった。

すごく嬉しくなった。

「好きだな。」

「絵が?、、、それとも俺が?」

自分の可能性を見つけたせいか自信がついた。

でも、ちょうどその時係の声が遮ってきたそれは写生の締め切りを知らせる声で、彼女は急いで絵を持って走っていった。

返事は戻ってから聞こう。

彼女は戻ってこなかった。

それからだいぶたって俺たちの絵が入賞し、来年のポスターに使われることが決まった。俺は副賞の鏡をとりにいった。

しかし、鏡はすでに引き取られていた。

俺に残されたのは賞状だけだけだった。

俺に一発かまし返すんじゃなかったのかよ!ばかばかしい、あいつは結局俺を暇つぶし程度にしか思ってなかったんだ。

俺は、、、お前のことが・・・

それから半年位してからだった。

俺の携帯に公衆電話からの着信が入ったのは。それは彼女からの電話。

「もしもし?」

「トシ?」

「アイかっ!?どーしたんだよ、いったい!!

「いいから!私のことはもう忘れてもいいよ。あの時は急に帰ってごめんね。あと、鏡私が貰ったからね。」

「そんなことはもういいんだよ。俺はお前に会いたいんだ。会って話したいことがあるんだ。」

自分は彼女に裏切られたと思い憎んでいたはずなのに、まだ好きだったようだ。

「無理だよ。」

「何で!俺はお前のことが好きなんだ。」

「トシ・・・。私ね、がんばってる人が好きなの。だから、、テメーなんて眼中にねぇってわけ。」

いつの間にかキツイ口調の奴になっていた。

「アンタはアンタの才能がある。邪魔はしたくねーな。またいつか会えればそれでいいだろ?もっと楽しいことあんじゃん?」

「あいつ今、何してんだろ。」

ただ俺は、あの時変わった。それだけはわかる。

だって今の俺には未来があるから。

いつか再び彼女と再会するための未来。

もしも彼女に会ってなかったら、俺の未来は―――

会ってなくても未来は必ずあっただろう。

でもそれはきっとただあのときの延長線…つまらない未来なら。

ちょっと悲しい想い出だけど、

やっぱり会えて

よかった。

そう想えた。

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2006年10月 3日 (火)

*Other Side Of The NEXT*

「、、、・・・だよ―――、、になる、、よ。・・・ときに 大好きな、、、に、、、だよ――大丈夫だよ。」

クリスマスが終わって、新年を迎えようとしている年末。

今日は朝からパラパラと雨が降っていて、夕方には雪へと変わった。

初雪だった。

でも私に喜びはなかった。私は4ヶ月前、親友だと思っていた子を失って、立ち直れずにいた。私は高校に入って宮城から、ここ三重へと越してきていて、彼女とは4月に別れたきり会っていなかった。何か胸に穴が空いた気持ちになっていて16歳高校一年のクリスマスさえ、パーティーをする気にはなれなかった。

「んっ?なんだろう・・。」

微かに聞こえてきた歌のようなものにひかれて見てみると、道の端の方に少し雪のかぶった黒い塊を見つけた。私は通り過ぎかけて、やっぱり足を止めたのだった。

「、、、雅美?」

そしてそれが小さな声で私の名前を呟いたような気がした。

知ってる。

私は座り込む彼に肩を貸した。

「――――高橋っっ!!

ガバッ

彼を私の家に運んでから数時間後、彼はやっと体を起こした。しかも、私の親友だった子の名を叫びながら。

「瞳を知ってるの?」

「やっぱり、あんた雅美か、、、。」

彼は何故か私の名前を知っていて、呼び捨てまでにしている。でも、私の記憶に彼の顔は・・・?

「あなた誰?ドコからきたの?宮城?」

「ああ。俺は榎本敦。高橋の友人、、だった。ってとこかな。」

彼は、あんなに弱っていたにもかかわらず強い目をしていた。

“榎本敦”聞いた事のある名前。でも、それは瞳の口からではない。

「俺は、高橋を見つけたくて、、、。あの時何もできなかったから。」

「えっ?、、、。ねぇ、どういう関係?工藤君は?」

私は彼女の彼氏である、イヤそうであった工藤君のことをふと思い出した。敦君と瞳が話しているところなんて一度も見たことがないというのに、宮城からずーっと来たところをみると、ただの友人だとは思えなかったからだ。

「いいな。瞳は、すごく羨ましい。だってあの子さっ、あんまり友達いなかったけど、少ない一人一人がいい友達だったから。私なんてたくさんいるみたいだけど、瞳以外上辺みたいなの。あの子いい子だったからね。」

「だった?、、って過去形。」

「だって、ほらっそうじゃん?」

だって瞳はもういないんだから。

敦君は瞳を見つけに行くんだと言う。私にはよくわからない。きっと、この人も私と同じ壊れているんだね。

「敦君、結構疲れてるっぽいし一週間くらいうちで休んでけば?家族4人にしては大きいんだ、私のうち。」

「さんきゅ、世話んなるわ。」

彼はそう言ってニッコリと笑った。

彼は事実状家出といった感じで出てきたらしい。なぜあそこで動けなくなっていたのかはわからない。廃人のようだった。

「ねぇねぇ、敦君ってケンカしたりするの?ほらっ、瞳って手ェ出すのかなり早いし、威力もすごいじゃん。」

「ん~そう言えばケンカなんてしたことないな。ってか、高橋が暴力ふるってんの見たことないんだって。それに彼女とは付き合いは短いんだ。ほら、受験のあたりだよ。」

敦君を連れてきてから2日。

すっかり元気になった彼と私はよく話すようになった。

話の中でよく気になるのがやっぱり二人の関係。親しそう、なわりに瞳のことを知らなすぎる感じ。

せっかくだから思い出しながらいろいろ教えてあげようと思った。

「あっ、ねえねぇ私が敦君見つけた時歌歌ってなかった?」

「ああ、あれか。」

私は興味深々で、彼の目を見た。

綺麗な空だよ 青くてとても澄んでいる 二人ここで肩を並べよう 綺麗な心 白くて輝く心 悲しいとき 苦しいとき 大好きな人に 大丈夫だよ。 そう言ってもらえるよ  大好きな人に 大丈夫だよ。 そう言ってあげようよ 言葉にして伝えようよ そうすれば 本当に 何もかも 大丈夫だよ!――

私は歌う彼の声を目を閉じて聴いていた。

どこかで聴いたことのあるような歌。

いつか誰かが歌っていた。その誰かがこう言っていた。

“この歌めちゃいい。でも続きがあって、本当はすっごく悲しい歌だったの。”

そして、私にだけ歌ってくれた。涙を流して歌ってくれた。そして私はハンカチをだしたのだ。

「暗い空もくる 未来がダメと泣いている ひざまずく自分が叫ぶんだ 誰もいないよ 悲しいとき 苦しいとき 大好きな人が “いなくて寂しい。” そう言って涙する 大好きな人に “伝えられない。” どうして?って苦しい 何もかも 壊れてく 何もかも 失うだけね  ―ねぇ誰か孤独な私にこう言ってよ “大丈夫”だとー」

私は涙を我慢して歌った。彼は呆然として私の方を見ていた。

「そんな、、、何?これが続きだってのか?」

そう言って悲しい目をした彼に誰かの顔が重なった。

瞳だった。

結局私のそばにいつもいたのは瞳で、私の想い出は彼女一色なのだ。

本当に孤独だったのはこの私。

彼女の周りはいつも温かくて、最高の居場所だった。

けれど私は彼女を裏切ってしまった。それに気付いたのは彼女がいなくなってからだということに、無力さを知った。しかしこの一年と少し、悲しみを押し留めれた力があった。それは彼女も私を裏切ったという更に悲しい気持ち。私は瞳を親友だと、周りから見てもそうだと思っていたのに彼女だけがそうではなかった。

「雅美、もっと話してくれないか。」

私は急に心がズキズキとした。私はこのたった二日で、彼に好意を持ってしまったのだ。しかし、、、それはかなうはずはない。

「うん。たくさん教えてあげるよ。あの子がね、チームに混ざってたって噂があるけど本当は違うんだよ。たまたまリーダーと友達だっただけなの。ここだけの話、友達以上恋人未満って雰囲気もあったらしいよ。でもいきなり会わなくなった。理由は合わなかったってだけ。あと、、、そう、工藤君。本当ははっきりしない関係だったの。どっちも告ってないんだよね。これはトップシークレット!あとあとぉ――、、、」

私は、思いつく限りの事をたくさん話した。自分で言いながらも思うが、彼女は以外に普通に面白い経験が多い。話の最中、彼は真剣な表情を見せていた。

「うらやましいな雅美は。本当の高橋を知ってる。あいつ言ってたぜ、“私には雅美だけなの”って。」

私は“はっ”と頭を上げた。なにそれ、瞳の裏切りはどうなるの?私自身が勘違いだったっていうの?

彼女はいなくなる前に私にSOSを出してはくれなかった。

私が気付かなかっただけなの?そうかもしれない。

瞳は私を裏切ったりしてないっっ!

「―――、、あたり前じゃん?私は親友だもんっ。」

最初はためらいつつ、しかしはっきりとした言葉で私は言った。そのとき私の表情が満点の笑みを浮かべているのが自分でもよくわかった。

「あっ、瞳って二重人格っぽいでしょう?」

「やっぱりそうなのか?」

彼はいつ聞こうかと思っていたらしく乗り出すように聴いてきた。

「違うの。三重人格なの。優しいのと、気が短いのと。もう一人はすごく冷めた奴。それはあまり出てこないよ。私的に嫌いかな。へへっ。」

「俺も知らないうちに会ってたかな。」

「それはないと思うな。そいつだけは他と違う空気あるもん。プレッシャーみたいの。でも、どうかな、人格なんてさペテンかも。瞳がそれっぽく振舞ってたって言えばそれまでじゃない?わかんないよね、実際。」

彼は“へー”と言うように目を上へ向けた。彼女のことを思い浮かべているのだろう。

彼女は自分の幾つかの性格をダサイと言っていた。それは多重人格が形成される理由を医学的に解明したときに非常に気に障る原因だったから。“自分が心の弱い人間です。つってるようなもんじゃん!!”と。

「もし人格が本当だとしてさ、幾つかの人格って、みんな別々の奴好きになったりするのかな、、、なんてな。」

「さぁ?」

さすがにそこまでは知らない私はあっけない返事を返した。

「でっ、、でなっ、俺が雅美に一番聞きたいのは―――」

彼は私の言ったとおりうちで一週間休養をとり、未練なく出て行った。私は胸に何かぽっかり穴があいたような感覚に捕らわれた。しかし好きな人がいなくなった感じではなかった。前にも一度味わったことのある。

“親友がいなくなった。”感覚。

もういやしない瞳を見つけるために歩く彼を、私はどうして止めなかったのだろう。きっと心の中で私も見つかることを期待しているからかもしれない。

彼に瞳を見つけて欲しい。

笑顔で空を見上げて言ったんだよね。

「あいつがいるところがわかる気がする。」

冬休みが終わって、私はかわりない生活を始めるのだろう。しかし今までと変わっているとしたら、それは自分は一人ではないと言える自信。

青空を見上げると必ず瞳がいて、私に笑いかけてくれているのが見える。“大丈夫だよ。”そう言ってくれてる。

私は彼に会えて本当に良かった。もし会ってなかったら、永遠に孤独だったに違いない。“すべてを知っているだけが親友じゃない。伝わらなかったことが裏切りじゃない。すべてがわかりあえるわけじゃないけど、大好きって思えるのが親友”だよね。ありがとう敦君。私の親友。私には親友が二人もいる。これからも増やしていけるような気がする。いつも瞳がついていてくれるから。

ただ、“大丈夫だよ”以外の言葉を話せるのなら教えて欲しい。瞳の本当は誰なのか。瞳の中にいる三人の彼女たちの誰がレプリカなのか。

彼に瞳のオリジナルは誰なんだって聞かれた時、私は答えられなくて泣いてしまった。彼はそれから何も聞かなくなった。私を慰める方だけにまわってくれた。

「すべてを知っているだけが親友じゃねぇじゃん。俺だって知らないことばっかだよ。高橋は俺に好きだって言ってくれたし、俺も好きだから俺らは親友なんだ。」

そう言った。

「俺、お前のこと好きだから親友だよ。雅美もそう思ってくれるか?」

“うん。”って返事はしなかった。

私の顔を見たらわかったと思う。だからその後彼は微笑んだんだよね。

すっごく温かかった。

「敦君。絶対に見つけてよね。あきらめないで。“大丈夫”だから。」

時間がたったら雪が降った跡もなくなり、雪が降った記憶もなくなっていくかもし

れない。

でも、確かに存在したから。

私は忘れたくない。



ここまで読んでくださったかた、本当にありがとうございます。

あっという間に3回目の更新をしたわけなんですが、まだまだ書きおきのがありますので、また一ヵ月後によかったら見にきてださぃ><お願いします。

やっぱり昔書いたものだけあって(というのは言い訳?)意味不明な部分があるんですけど、自分だからカナ・・・ああ、きっとこういうことなんだろうって昔の自分をわかってあげれるんですよ。(笑)

本ト自己満足><

でも、やっぱり真剣に書いてたって想うから、また載せ続けたいです。

アクセス解析を見てもそれほど見てくれてる人はいないみたいなんですが、でも少ないですけど見てくれてる人がいて嬉しいです。

もしよければコメントもいただけると嬉しいです^^;

気が向いたら・・・お願いします><

               aya

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